古文の文法・単語・敬語・読解 要点の参考書&問題集

古文のツボ

上級編

古文 読解 物語話型 恋愛譚(れんあいたん) 「 妻問ひ」

【妻問ひ(つまどひ)】

「妻問ひ(つまどひ)婚」…男が女のもとを訪ねる形の結婚

貴族の姫君は、人前に顔をさらすのははしたないとされていました。
高貴な女性ほど、奥へ、奥へ、だから、現在でも「奥さん」という言葉に残っています。
御簾(みす)を降ろし、几帳(きちょう)をたて、手に扇を持って顔を隠している。
(→学校で使っている資料集で確認してくださいね)
だから、男女の境界で頻出する動詞、

〈定型の「動詞」〉
・「逢ふ」…結婚する
・「見る」…結婚する

になるのは、いきなり…って感じがしますが、男性が女性の顔を面と向かって見る、というのは、かなり親密な間柄になっていることを意味します。

そのような「深窓(しんそう)…部屋の奥に引っ込んでいる」姫君を、何とか隙(すき)をうかがって、男はのぞき見しようとします。

〈定型の「慣習」〉
・「垣間見(かいまみ)」…若君が興味をひかれた姫君を物陰からこっそりのぞき見て、品定めする。

風で御簾(みす)が吹き上げられて、チラッ、とか、お約束ですね。
で、ビビッときたら、和歌を読みかけます、が、手立てがない。
そこで、姫君の側近の女房とかにアプローチして、なんとか文(ふみ)を渡そうとします。
何とか渡す、姫君は、
フンッ、
ヘッ、
って感じで、やんわり、断る(あんたなんかダメ)和歌(返歌)を返す。
和歌は詠みかけられたら、いかなる理由があろうとも返歌を返さないといけません。
じゃないと、こちらが返歌も返せないアホタレだと言われてしまう。
このように、和歌は「贈答(ギフト)」、やりとりするもの、やりとりして関係性を深めていくコミュニケーションツールだったのです。
女性は、最初、ケッ!と必ず断ります。
なぜか?
女性は女性で、男の品定めをしているのです。
夫として受け入れるかどうかのテストをしているのです。

〈男性の評価基準〉
・「まめ」…まじめだ、誠実だ。夫として、せっせと女のもとに通ってくるナイスガイ。
・「あだ」…浮気だ、いいかげんだ。一晩二晩、通ってきて、あとはよその女性にちょっかいを出す。いけ好かない野郎。

重要単語「~なり」「まめまめし」「あだあだし」形容動詞、形容詞、バリエーション多数、このように語幹でおさえるのが、重要古文単語速習のコツですよ。

で、男が女の家で、一晩過ごす、二晩過ごす、三日三晩続けて通ったら結婚成立!
このようなアバウトな結婚が、「妻問ひ婚」です。
男は妻としたなら、やはり、三日に一度は妻のもとを訪ねないと、夫としての愛情が足りない、ということになる。
だから、『蜻蛉日記』なんか読むと、
「今日は来るかしら、来ない…」
「今日は来るかしら、来ない…」
三日たつと、作者の道綱母はブチ切れます、で、いつも道綱ちゃんがシクシク泣いていましたね。

でも、「まめやかなる」男子は、せっせと妻のもとに通っていきます。
男が女のもとへ「通ふ」定型の文脈、たどってみますか。
センター、共テ古文の王道の文脈です。

国がやることですから、王朝物語の典型、『源氏物語』出したい、
でも、学校でやってるところもあるから出せない、
だから、毎年、「源氏物語のできそこない」を出してきます。
この姫君のキャラ、紫の上マルパクだろう、みたいな…
昔からそうですが、共テ古文の対策するなら、『源氏物語』をやるのが一番はやいですよ~!

 

〈王朝物語の典型的な話型〉

若君…日が暮れると、目立たない地味な姿で、お供も少なく、女のもとに出かけていく。

【服装】
・「狩衣(かりぎぬ)」、「指貫(さしぬき)」…ズボン、はかま、みたいなはき物、活動的な服装で出かける。で、「よみ」が問われる。

【お供】
・「小舎人童(こどねりわらは)」…少年の召使
・「随身(ずいじん)」…ガードマン、など、お供は最小限で、目立たないようにして出かけていく。
「乳母子(めのとご)」…若君を育てた複数の乳母(めのと)には、同じ年周りの乳母子(めのとご)がいる。その中の男子が若君の腹心となっておそばに仕える。光源氏なら、惟光朝臣(これみつあそん)がいつもそばに仕えている。女子なら、上述の姫君の側近の女房、ガッチリ姫君をガードしています。乳母子は男女どちらとも、センター、共テ古文の文脈で活躍する重要なサブキャラになる。

【乗り物】
・「牛車(ぎっしゃ)」を「やつし」て、「忍び」ながら女のもとに「通ふ」。飾りつけなど一切しない。

【日にち】
・陰暦二十ニ、三日ごろ。月が「有(在)明月(ありあけづき)」だから。

【月】…すなわち、ドラマの照明装置
・有(在)明月…日が暮れて、宵(よひ)の間は登ってこないので、真っ暗。男が女のもとに忍んでゆくのにピッタリ。
男が女の家に到着したタイミングで、東の空から登ってくる。右下側が欠けている、「下弦の月(下側に弦を張ったような月)」。明け方、男が女の家を出ていくときに、まだ西側の空に有明月がかかっている。男は、昨夜の逢瀬(おうせ)を思いだし、「後朝(きぬぎぬ)の歌」を女に贈り、女が返歌を返す、和歌の贈答をして、愛を確かめ合う。ココのコミュニケーションが共テ古文のツッコミどころ。

【時間帯】
宵(よひ):夜になったばかりのころ。

暁(あかつき):夜明け間際、夜のおしまい…一番鶏が鳴く
※「宵~暁」までが夜。すなわち、「逢瀬(おうせ)」の時間。

〈定型の「動詞」〉
・「やつす(やつる)」…他動詞(自動詞)の違いはあるが、目立たない、地味な姿になること。
・「かよふ」…男が女のもとに出かけて行く。
・「住む」…夫として女のもとに通う。
・「しのぶ」…人目につかないようにする。




女の家で一晩すごす。
・「契(ちぎ)る」 …契りを交わして、愛を深めあう。


・「後朝(きぬぎぬ)の別れ」…男女が共寝した翌朝、それぞれの衣を着て別れること。
・「後朝(きぬぎぬ)の歌」…男女が別れた後、和歌の贈答をしたりして。
※男女が共寝するとき、互いの衣の、片側の袖(そで)と片側の袖とを重ね合わせて敷く。
だから、男女が別れる、あるいはどちらかが死別すると、かつて重ね合わせていた袖は、片側だけになってしまいます。

・「衣片敷く(ころもかたしく)」…恋人(男・女)を失って、一人残された男・女が寂しく一人寝をすること。
・「片袖(かたそで)を敷く」…    〃          〃   

と、和歌で詠まれて、問われます。「かつていた恋人が、今はもういない。寂しく一人寝をしているんだナ」と、文脈がズバッと見えてしまうんですね。和歌ってことは…そう、高配点の問題にからみますよ!

以上、これらの単語から、人物関係、文脈が見えてきます。
しかも、「イモヅル」!

〈定型の「名詞」〉
「男女の恋物語」「男女の別れ」、といった文脈、よく出てきますね。
その文脈で問われるのが、「世」「世の中」です。

・「世・世の中」…男女の仲・夫婦仲

というもの。ホント、聞かれますね。
「世間」の意味もありますが、それは聞いてもしょうがない。
単語単独で聞くなら、記述で聞きたいところです。
選択肢問題なら、五者択一、「男女の仲」で洗って、二者択一、文脈・人物関係から正解をしぼる、といった出題の仕方でしょう。

〈定型の「掛詞」〉
男女ラブラブの文脈を受けて、
「思ひ」の「ひ」に「火」を掛ける。
男女の別れの文脈を受けて、
季節の「秋」に「飽き」を掛ける、「枯れる」の「かれ」「かる」に「離(か)れ」「離(か)る」を掛ける。
→→→古文 和歌の修辞2 掛詞・縁語

-上級編

Copyright© 古文のツボ , 2025 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.