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上級編

古文 和歌の修辞2 掛詞・縁語

 

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「掛詞」を「なんとなく」で判断していませんか?結果、設問になったときも、「なんとなく」掛詞をとって、「なんとなく」ひっかかっていきます。
「序詞」についても同じことが言えますが、「判断根拠を明確にすること」がポイントです。
判断根拠を明確にして「掛詞」をとる、まちがえる、だから「なぜ判断を間違えたのか?」検証して、次の演習にフィードバックしていけます。
「なんとなく」判断していると、検証も「なんとなく」になります。演習をやってもやっても積み重ならない。これが演習やったつもりの「つもり」学習です。
昔の教養人たちは、いきあたりばったりでデタラメに「掛詞」を詠んでいるわけではありません。それなりの根拠があります。ココでその判断根拠をしっかりおさえましょう。

 

【「掛詞」とは?】

「掛詞」はダジャレと言えばダジャレなのですが、そのダジャレにしてもそれなりに根拠をともなって使われています。ココで掛詞を掛ける「根拠」をしっかりおさえましょう。「文節」の概念がどうしても必要になってきますよ。

〈掛詞〉
…和歌の一部分に二つの異なる語句を掛け合わせる表現。

 

1.〈二重の文節関係によって掛ける〉

文脈→→→
・秋の野に人まつ虫の声すなり 我かと行きていざとぶらはむ
←←←文脈

注:サ変「す」終止形に接続し「声」とあるので、「なり」は推定(ようだ)。「なり」は終止形で「句切れ」(和歌の切れ目)になっている。

口語訳:秋の野原で人を待つという松虫の声がするようだ。私を待って鳴いているのかと、さあ、行って訪ねてみよう。

解説:上の文脈に従えば、「人/待つ」と分節を分けたい。下の文脈に従えば、「松虫の/声」と分節を分けたい。上の文脈と下の文脈で、「まつ」の部分の文節が重なっている、二重になっているのがわかりますか?これが典型的な「二重文節関係を用いた掛詞」です。

 

2.〈「序詞」「枕詞」によって掛ける〉

風吹けば沖つ白波たつた山夜半(よは)にや君がひとり越ゆらむ

注:別れた夫が、他の女のところに通うため夜中に山越えをするのを心配して元妻が詠んだ歌。夫が山越えする姿は眼前にないので、「らむ」は現在推量(今ごろ~しているだろう)。

口語訳:風が吹くと沖の白波は立つ、その「たつ」ではないけれど、竜田山を夜中にあなたが一人で今ごろ越えているのだろうか。

解説:夫の夜の山越えを気づかった元妻の歌(『伊勢物語』『大和物語』)、感動、詠嘆の中心は「夫の山越え」であり、「沖の白波」ではありません。「風吹けば沖つ白波」は地名の「竜田山」から掛詞「立つ」を導き出す働きをしている「序詞」です。前回、〈掛詞を導く「序詞」〉の項で詳述しています。
ちなみに、上の文脈に従えば「沖つ/白波/立つ」と分節を分けたい。下の文脈に従えば「竜田山/夜半にや」と分節を分けたい。「二重文節関係を用いた掛詞」にもなっています。このように、掛詞を掛ける根拠は一つだけとは限りません。

梓弓(あづさゆみ)はる立ちしより年月の射るがごとくもおもほゆるかな

口語訳:「弓を張る」という言葉どおり、春になるやいなや年月が矢を射るようにすばやくすぎていくように思われることだ。

解説:「梓弓」は「押す・引く・張る・射る」を導く「枕詞」。この「枕詞」によって「春」に「張る」が掛けられています。『古今和歌集』でさかんに用いられたパターン。

 

3.〈縁語によって掛ける〉

「縁語」とは、簡単にいうと「縁続きの言葉」。「○○つながり」と、連想上、何かしら結びつきのある語です。二語に限らず、三、四、五語と縁語になる場合もあります。縁語になっている時は、縁語のいずれかが掛詞になっている場合が多いです。
さて、上記の例を見ましょう。「弓」「張る」「射る」が「弓つながり」の縁語になっていて、「春/張る」が掛詞になっていますね。つまり「梓弓」の枕詞で掛ける、「弓つながり」の縁語で掛ける、と二重に掛けテクニックをつかっています。
ちなみに、掛けるテクニックは一つだけとは限りません。二重、三重に掛けテクニックを用いたりもします。『古今和歌集』など、和歌の修辞が使われてナンボの時代ですから、平安時代の和歌を解釈する上では、やはり和歌の修辞の知識は欠かせないのです。
さらにちなみに、受験生が悩むところなので言っておきましょう。「縁語になっているからどれか掛けている」という判断は正しいですが、「掛詞になっているから縁語」とは限らないので注意しましょう。掛けるテクニックは今見ているとおり、いくつもありますからね。

 

4.〈文脈の要請によって掛ける〉

実戦では、これが一番多いでしょう。文脈の中で、ドラマの核心になっている事項、文脈に頻出するモノコト、を掛けていきます。
「~を題にて歌つかうまつれ!」
題が与えられて歌を詠んでいる(これを「題詠(だいえい)」と言う)場合は、この「題」を掛ける場合が多いです。
掛詞が問われてわからない場合は、ドラマの核心となっているもの、文脈中の頻出事項、与えられた「題」を洗ってみてください。

典型的パターンを見ておきましょう。受験生、必見です。

・「かる(れ)」→「枯る(れ)/離(か)る(れ)」
・「あき」→「秋/飽き」

(文脈)
…男と女が愛しあって暮らしている→男が他に女を作る→旧女は和歌を詠む。

和歌
…季節は秋、その「あき」ではないけれどあなたは私に飽きたのね。
和歌
…草木が枯れる、その「かる」のように、
あなたはわたしから離れてゆくのね。

→その和歌に感動して男は旧女のところに帰って来て幸せに暮らす。

どこかで読んだ気がしませんか?『伊勢物語』『大和物語』などの歌物語に頻出します。後で「歌徳譚(かどくたん)」という項で詳述しましょう。

 

・「思ひ」の「ひ」に「火」を掛ける

(文脈)
…男女の燃えるような恋(まれに親子の愛情などもあり)→和歌(の贈答)

和歌
…真っ赤に燃える火のように、あなたを愛しております。

「思ひ」に「火」をかけるのはあまりにつらすぎます。だからだいたい「火」に関する縁語があるはずです。まれに、「雪がとける」等の文脈をうけて「日(お日さま)」が掛けられる場合もあります。

大学受験においては超頻出です。「長雨/眺め」の掛詞など、きいてもしょうがない(問うなら記述で説明させます)。
とはいえ、掛詞は無数にありますから、いろいろな文脈を読んで掛詞を探り出す練習を積む必要があります。受験において和歌が重要だ、といった意味がわかりますか?和歌を問うことで、つまりは読みこなしてきた演習量がわかるからです。

さて、上記の文脈をみると、どうやら和歌には人を幸せにする力があるようですね。和歌も功徳(くどく=後々、幸せをもたらす原因となる善い行い)となりうる、というのが、当時、和歌をめぐる価値観としてありました。その価値観に基づいて物語や随筆などが書かれています。後で、それらを「歌徳譚」としてまとめましょう。

 

 


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