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古文のツボ

上級編

古文 読解 物語話型 出家譚(たん)1 (出家表現)

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古文に頻出する話の型(ストーリー展開の典型的パターン)を見てみましょう。
「譚(たん・だん)」とは、「オハナシ」という意味です。
演習量をある程度こなしてきた人にはピンとくるはずです。
もし、本番でこれらの話型が出題されたら、一気に点差を広げられます。最初に読み始めた段階で文脈がある程度見えてしまいます。設問できかれることもある程度決まっています。時間と点数を一気に稼いでしまうのです。稼いだ時間は評論にまわしていくから、結局、現代文でも差を広げられます。
点差の開きづらい国語でアドバンテージを得ると、他の教科も楽になります。それが実戦!

【出家譚(たん)】

それでは、いよいよ実戦にそなえましょう。
とにかく大学入試で一番好まれる大ネタは「出家」です。出家をめぐるストーリー展開には、ある共通するパターンが見出されます。それを理解するために、どうしても因果応報思想をおさえてほしかったのです。

→→→古文 読解 仏教思想1 因果応報・三世

出家というのは人生の一大事、

→→→古文 読解 仏教思想2 功徳・極楽往生

まさしく『徒然草』では「大事(出家)」⇔「小事(俗世間のゴタゴタ)」と言っています。そこに至るまでには、それ相応のショッキングな事件があります。

・男女の仲(=古文では「世・世の中」)のもつれ。
・自分を可愛がってくれた主人、愛する者(親・子・兄弟・夫婦・恋人)の死。
・自分の死期をさとる。

など。そうすると、人は「苦しみ悲しみはさんざんあじわった」「こんな俗世間なんかもういやだ」、厭世(えんせい=世の中をイヤに思う)的になって来世に救いを求めます。そこで功徳(くどく)を積むことを考える、その功徳の最上級が「出家」でした。そこで「出家表現」が出てきて、必ず設問になります。
まとめてみましょう。

〈出家譚(たん)Ⅰ〉

事件
・「世の中(=男女の仲)」のもつれ。
・主人、愛する者の死。
・自分の死期をさとる。

↓ 功徳を積む

出家

極楽往生

〈出家表現〉

・御髪(みぐし)下ろす …剃髪(ていはつ=髪をそる)して出家する。
・頭(かしら)下ろす …    〃
・様(さま)変ふ   …    〃
・形(かたち)変ふ  …    〃
・世を背(そむ)く  …    〃
・世を遁(のが)る  …    〃
・世を厭(いと)ふ  …    〃
・世を捨つ      …    〃
・やつす
…目立たないように姿を変える。剃髪(ていはつ)して出家する。

・墨染め
…「墨染め衣(すみぞめごろも)」の略。灰色の服。喪服(もふく)。僧衣。

「御髪おろす・頭おろす」はセット。「御髪おろす」の方が貴人の出家に対して用いられます。
また「そむく・のがる・いとふ・すつ」だけで出家を表現したりします。特に和歌で、これらの省略形が使われます。
「やつす(る)」は、男が女のもとに忍んで通う、といった文脈で「地味な姿をする」の意が問われますが、出家も表現したりします。
とにかく要注意は「墨染め」です。
上智大学で「天の下(あめのした)ひとつ墨染めにやつれぬ」、選択肢は
1.「世の中の人は喪に服した」
2.「世の中の人はみな出家した」
正解1・「喪服」、といった問いを出していますから、決めつけるのはまずいと思います。「喪服」の可能性も疑いながら、とにかく「墨染め=出家」はよく問われます。
早稲田大学、上智大学など、難関系の大学は、ほぼ和歌が設問になると思って本番にのぞんでください。センター古文もしかりです。和歌ではよく比喩表現が使われます。早稲田大学、上智大学はそこをつっこんできます。和歌で「墨染め=出家」要注意、肝に銘じておきましょう。

ちなみに、出家に際して髪を剃(そ)る、「剃髪(ていはつ)」についてですが、男性はツルツル坊主のツルッパゲですが、女性はツルツルではないので、注意しましょう。
「尼さんなのにどうして髪があるんですか?」
ときいてくる受験生がいますが、尼は髪があります。ズルズル引きずるぐらい長かった髪を、肩のあたりでバッサリ切り落とします。それを「尼削(あまそ)ぎ」といいます。まあ、オカッパ頭です。少女もこの髪型です。女性は髪が長ければ長いほど美しいとされた時代、肩のあたりで髪を切るというのは十分衝撃的だったことでしょう。

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