古文の文法・単語・敬語・読解 要点の参考書&問題集

古文のツボ

中級編

古文 敬語5 敬語動詞を覚えよう!

 

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いろいろな敬語を見てきましたね。そうしたら、最後に敬語動詞を一気におさえてしまいます。普段読んでいる古文に敬語は普通に使われている。だったら敬語なんかさっさと身に着けてしまう。そうすれば、普段の古文読解がすべて敬語の演習になっていきます。

同じグループ、対立するグループでグループ分けしながらまとめていきます。

【尊敬の敬語動詞】

〈「与ふ」尊敬グループ〉

たまふ(給ふ・賜ふ)
たぶ(給ぶ・賜ぶ)
たうぶ(給ぶ・賜ぶ)
…四段・本動詞・「与ふ」尊敬(お与えになる・下さる)
 四段・尊敬補助動詞(~なさる・お~になる)

たまはす(給はす・賜はす)
…下二段・本動詞・「与ふ」尊敬(お与えになる・下さる)

「たまふ」「たぶ」「たうぶ」は補助動詞の用法までまったく同じ。意外な感じはしますが、「たぶ」「たうぶ」はびっくりするぐらい出題されます。そんなに難しい感じはしないでしょ?ところが、「かな」で書いて活用すると…。

例1.かの衣の質(しち)かへしたべ。
(あの預けておいた衣をお返しください。)
例2.深き山にすてたうびてよ。
(深い山に捨ててしまってください。)

1.「返す」にくっついて尊敬の補助動詞「給ぶ」命令形「たべ」。
「何か食べたのか?」とか…
2.「捨つ」にくっついて尊敬の補助動詞「給(う)ぶ」の連用形「たうび(トービ)」、「てよ」は完了の助動詞「つ」命令形。
「うびて、って何だ?」とか…

これを読んでいる受験生は「あほか」と思って読んでくれているでしょうが、ひっかかります。早稲田大学は「かな」の難しさだと述べてきました。このように、シンプルだけれどひっかかる、というのが大好きです。くれぐれも「活用したカタチ」に注意してください。五者択一を二者択一にしぼる「小ネタ」として使えます。

「たまはす」は「給ふ」の敬意を強めた形。補助動詞の用法はありません。
「たまはす」と「たまはる」(「受く」謙譲・いただく)をよくひっかけますね。わかっちゃいるけどひっかかります。設問にならなくても、動作は正反対ですから、読み違えると人物関係を読み違え、結局、どこかの設問でひっかかります。要注意!

 

〈「あり」尊敬グループ〉

おはす(御座す)…サ変
おはします(御座します)…四段
ます…四段
います…四段
まします…四段
いまそ(す)か(が)り…ラ変
…本動詞・「あり・行く・来」尊敬〈いらっしゃる・おいでになる〉
 尊敬補助動詞(~ていらっしゃる)

個々にみれば「あり」尊敬、「行く・来」尊敬、など、いろいろ違いはあるでしょうが、メンドーですね?
そこで、なんだろうがかんだろうが、本動詞だろうが補助動詞だろうが、すべて「いらっしゃる」と訳せばすんでしまうグループとしておさえる。カンタンでしょ?

 

〈「言ふ」尊敬グループ〉

のたまふ(宣ふ)
…四段・本動詞・「言ふ」尊敬(おっしゃる)
のたまはす
…下二段・本動詞・「言ふ」尊敬(おっしゃる)
おほす(仰す)
…下二段・本動詞・「言ふ」「命ず」尊敬(おっしゃる・命じなさる)
仰せらる
…下二段・本動詞・「言ふ」「命ず」尊敬(おっしゃる・命じなさる)

「宣ふ」<「宣はす」(敬意が強い)
「仰す」<「仰せらる」(敬意が強い)

でしたね。
ちなみに、助動詞「る」「らる」の意味で、「仰せらる」がつっこまれることがありますが、「仰せらる」の「らる」は尊敬に決まりです。

 

〈「思ふ」尊敬グループ〉

おぼす(思す)
おもほす(思ほす)
おぼしめす(思し召す)
…四段・本動詞・「思ふ」尊敬(お思いになる)

「思ひ給ふ」<「思す(思ほす)」(敬意が強い)<「思し召す」(敬意最強)
「思し召す」は最高敬語とは言いませんが、ほぼ、準じたあつかいになります。皇族、もしくは摂政関白レベルの人が主語でしょう。
【敬意の強さの違い】→→→敬語4敬意の強さ

 

〈謙譲と二マタをかけるグループ〉

まゐる(参る)
…四段・本動詞・「飲む・食ふ」尊敬(召し上がる)
たてまつる(奉る)
…四段・本動詞・「飲む・食ふ」尊敬(召し上がる)
         ・「着る」尊敬(お召しになる)
         ・「乗る」尊敬(お乗りになる)

 

〈その他、本動詞でしか使われないもの〉

ごらんず(御覧ず)
…サ変・本動詞・「見る」尊敬(御覧になる)
きこしめす(聞こし召す)
…四段・本動詞・「聞く」尊敬(お聞きになる)
                         ・「飲む・食ふ」尊敬(召し上がる)
                         ・「治む」尊敬(お治めになる)
しろしめす(知ろし召す)
…四段・本動詞・「知る」尊敬(お知りになる)
                         ・「治む」尊敬(お治めになる)
めす(召す)
…四段・本動詞・「呼ぶ」尊敬(お呼びになる)
                         ・「取り寄す」尊敬(お取り寄せになる)
                         ・「飲む・食ふ」尊敬(召し上がる)
                         ・「乗る」尊敬(お乗りになる)
                         ・「着る」尊敬(お召しになる)
おほとのごもる(大殿籠る)
…四段・本動詞・寝(ぬ)尊敬(おやすみになる)
つかはす(遣はす)
…四段・本動詞・「〈人を〉やる」尊敬(〈人を〉おやりになる)
                         ・「与ふ」尊敬(〈物を〉おやりになる)
あそばす(遊ばす)
…四段・本動詞・「す(詠むなど)」尊敬(詩歌・管弦などをなさる)

以上、
尊敬はこんなところでしょう。

 

【謙譲の敬語動詞】

〈「与ふ」謙譲グループ〉

たてまつる(奉る)
…四段・本動詞・「与ふ」「・(人を)やる」尊敬(差し上げる・参上させる)
          ・謙譲補助動詞(お~申上げる)
まゐらす(参らす)
…下二段・本動詞・「与ふ」謙譲(差し上げる)
              ・謙譲補助動詞(お~申上げる)

「奉る」「参る」の尊敬の用法に注意!「参る」「参らす」のちがいに注意!特にも「参らす」の訳出に注意。難関大でよく問われる表現に「参らせ給ふ」がありますが、これは難しいので上級編で解説しましょう。

 

〈「言ふ」謙譲グループ〉

まうす(申す)…四段
きこゆ(聞こゆ)…下二段
きこえさす(聞こえさす)…下二段
…本動詞・「言ふ」謙譲(申し上げる)
 補助動詞(お~申し上げる)

「申す」「聞こゆ」「聞こえさす」ともに、本動詞、補助動詞の用法が同じ。「動詞+聞こゆ」「動詞+聞こえさす」と傍線部にあったら、選択肢はまっ先に謙譲の補助動詞、「動詞し申し上げる」で洗うように言いましたね。選択肢を減らす「小ネタ」として使えます。

【聞こゆ・聞こえさす】→→→敬語2まぎらわしい敬語動詞の識別

「聞こゆ」「聞こえさす」については、
聞こゆ < 聞こえさす(敬意強)
敬意の強さの違いを読み分けて、人物関係の把握に使いましょう。

【敬意の強さ】→→→敬語4敬語動詞の敬意の強さ

 

〈「言ふ」謙譲グループ・ただし絶対敬語・本動詞の用法のみ〉

奏(そう)す
…サ変・本動詞・「言ふ」謙譲(申し上げる・奏上する)
啓(けい)す
…サ変・本動詞・「言ふ」謙譲(申し上げる)

「申し上げる」対象が絶対的に決まっているのでしたね。
奏す…(天皇・上皇・法皇に)申し上げる・奏上する
啓す…(皇后・中宮・東宮に)申し上げる
主語をまちがえないように、でしたね。「主語が誰かはわからない」、文脈次第ですよ。
それから、虫食い問題になりますから、「申し上げる」対象をしっかりおさえましょう。

【絶対敬語】→→→敬語3皇族の敬語表現

 

〈「行く・来」謙譲グループ〉

まゐる(参る)
…四段・本動詞・「行く・来」謙譲(参上する・参詣する)
     ・「す・与ふ」謙譲(して差し上げる・差し上げる)
まうづ(詣づ・参づ)
…下二段・本動詞・「行く・来」謙譲(参上する・参詣する)

 

〈「出(い)づ」謙譲グループ〉

まかる(罷る)…四段
まかづ(罷づ)…下二段
まかりいづ(罷り出づ)…下二段
…本動詞・「出づ」謙譲(退出する)
※「まかる」については「都から地方に下る」意味もあります。

 

(「仕(つか)ふ」謙譲グループ)

はべり(侍り)…ラ変
さぶらふ(候ふ)…四段
…本動詞・「仕ふ」謙譲(お仕えする・伺候する)

 

〈その他の謙譲の動詞〉

つかう(へ)まつる(仕う(へ)まつる)
四段・本動詞・「仕ふ」謙譲(お仕え申し上げる)
           ・謙譲補助動詞(お~申し上げる)
うけたまはる(承る)
四段・本動詞「受く・聞く」謙譲(いただく・うかがう)
           「引き受く」謙譲(お引き受け申し上げる)
たまはる(賜る・給わる)…
四段・本動詞「受く」謙譲(いただく)
       謙譲補助動詞(~していただく)

「たまはる」と「たまはす(「与ふ」尊敬 お与えになる・下さる)」をよくひっかけますよ。

 

【丁寧の敬語動詞】

〈「あり・をり」丁寧グループ〉

はべり(侍り)…ラ変
さぶらふ(候ふ)…四段
…本動詞・「あり・をり」丁寧(あります・ございます)
 丁寧補助動詞(~です・~ます)

「侍り」「候ふ」は、謙譲・丁寧ともに用法は同じです。平安時代には「侍り」が、平安末から中世にかけては「候ふ」が用いられました。使われる時代がちがうだけです。

 

【謙譲(へりくだり)】

たまふ(給ふ)…下二段・謙譲補助動詞(~ます・~させていただく・拝~)

最重要事項です。【丁寧】のあとでわざわざあげた理由はもうわかりますね?そう、読み手・聞き手を高める(丁寧)か、書き手・話し手自身を低める(へりくだり)か、やり方のちがいであって、結果は同じでしたね。「コミュニケーション(言葉のやりとり)関係において言葉の受け手側に敬意をあらわす」という点では共通しています。だから、謙譲なのに「~ます」なんて訳すのでしたね。

【「給ふ」のへりくだり表現】→→→敬語2まぎらわしい敬語動詞

以上、ココまで同意語グループでまとめてきました。最後に反意語グループでまとめいきます。

 

給ふ⇔たまはる

給ふ・たぶ・たうぶ・たまはす
…「与ふ」尊敬(お与えになる・くださる)

たまはる
…「受く」謙譲(いただく)

※「たまはす」と「たまはる」をまちがえないように!「たぶ」「たうぶ」活用して「かな」で書かれてもきちんと訳せるように!

 

のたまふ・仰す⇔うけたまはる

のたまふ・のたまはす
おほす・おほせらる
…「言ふ」尊敬(おっしゃる)

うけたまはる
…「聞く」謙譲(うかがう)

 

聞こし召す⇔申す・聞こゆ

聞こし召す
…「聞く」尊敬(お聞きになる)

申す・聞こゆ・聞こえさす
奏す・啓す
…「言ふ」謙譲(申し上げる)

「聞こゆ」「聞こえさす」の謙譲、きちんと訳せるように!「小ネタ」として、選択肢を消す道具として使うように!「奏す」「啓す」の「言う対象」をしっかりおさえておくように!

 

参る・まうづ⇔まかる・まかづ

→→貴所
参る・まうづ・まうで来
…「行く」「来」謙譲(参上する・参拝する)

←←貴所
まかる・まかづ・まかり出づ
…「出づ」謙譲(退出する)

敬意の方向を問われたときに「まかる」「まかづ」は気をつけてください。つねに出てくる(帰ってくる)貴所(貴人)に対する敬意です。

 

以上、これで文法と敬語は終了!!

細かかったでしょ?目指したのは「使える文法・敬語」「優先順位をつけて、出るものを徹底的に!」でしたね。
これらはただの序章にしかすぎません。みなさんが日々の読解演習の中でいかして、はじめて完結するものです。莫大な演習に向けて、スタートをきって下さい。

おつかれさまでした。

 

 


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