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古文のツボ

中級編

古文 文法9 反実仮想の助動詞「まし」

 

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ココは解説が長くなります。反実仮想の「まし」は、学校や塾予備校の授業でさんざん説明を受けているはずです。考査でも必ず問題になってきた。だから、実戦では傍線を引いて口語訳、ではないということです。とりあえず、反実仮想といえば「ましかば~まし」「せば~まし」というおさえ方をやめること。反実仮想の表現は無数にあります。

 

★★★★★【助動詞「まし」反実仮想】

反実仮想とは漢文調で読むと「実ニ反シテ仮想ス」、現実に反して仮に想像するという意味です。いまさら言ってもしょうがないことを後から詠嘆的にイジイジ回想する表現です。反実仮想といえば「ましかば~まし」というワンパターンは卒業しましょう。応用がききません。
「ましかば~まし」「せば~まし」といった典型的な反実仮想の表現に限らず、仮定条件句をともなったら「まし」は全て反実仮想です。
「ましか」は「まし」の未然形、「ませ」は「まし」の上代未然形(『万葉集』で出てきます)、「せ」は助動詞「き」の未然形(「き」の未然形は「せば」の形でしか使われない)。
結局、みんな「未然形+ば」で仮定条件句を構成しているわけです。

仮定条件句~まし。=反実仮想(~したなら、~しただろうに。)
・「まし」未然形「ましか」+ば(接続助詞)~まし。
・「まし」上代未然形「ませ」+ば~まし。
・過去の助動詞「き」未然形「せ」+ば~まし。
・活用語未然形+ば~まし。  
 …例:書かば~まし。読まば~まし。
・形容詞の連用形+は(係助詞)~まし。
 …例:無くは~まし。いみじくは~まし。
・形容詞型活用助動詞「べし」連用形「べく」+は~まし。
・形容詞型活用助動詞「まじ」連用形「まじく」+は~まし。
・打消の助動詞「ず」連用形「ず」+は~まし。

いまさら言ってもしょうがない、過去の事実について仮想する表現、べつに過去の表現がなくても「~なら、~だろうに」と過去で訳すのはそのためです。
また、いまさら言ってもしょうがない過去の現実を、「でも、あの時…」と、イジイジ詠嘆的に仮想するから「~だろう」「~だろうになあ」と詠嘆的に訳すことになります。まあ、訳しても訳さなくてもどうでもよいでしょうが。

 

〈反実仮想/現実〉

反実仮想をきちんと訳せるのは当然、反実仮想から現実を説明できるようにしてください。仮定条件句とその帰結の句(「~まし」の句)とをそれぞれ肯定は否定に、否定は肯定に入れ換えて、確定条件「~ので(原因・理由)」でつなぐと現実が出てきます。

反実仮想 仮定条件句(~したならば~帰結句(~しただろうに)。
 ↑                   ↑
「肯定⇔否定」をひっくり返す   /「肯定⇔否定」をひっくり返す
 ↓                   ↓
現実 確定条件句(~しなかったので~帰結句(~しなかった)。

現代語で練習してみましょうか?

・あの時やさしくしていたならば、カノジョとわかれずにすんだだろうになあ…
いまさら言ってもしょうがないのに、メメしくイジイジ、反実仮想していますね。さて、その現実は?
・あの時やさしくしなかったので、カノジョとわかれてしまった。

それが悲しい現実です。肯定・否定をひっくり返して「~ので」でつなげるだけです。簡単でしょ?
古文でやってみましょうか。

・わが背子(せこ)と二人見ませばいくばくかこの降る雪のうれしからまし
(私の夫と二人で見たなら、どんなにこの降る雪がうれしいだろうか
現実→夫と二人で見ることができないので、この降る雪がうれしくもなんともない。

「ませば~まし」、典型的な上代、『万葉集』の表現です。防人(さきもり)か何かで、夫が国境防備にでもかりだされたのでしょうか、恋しい夫と別れ別れになった女の悲しみが読みとれますか?

そう、実は「反実仮想」の表現て、この「現実」の読み取りが求められます。「反実仮想」って、イジイジした詠嘆的な表現だって言いましたね。詠嘆的な表現の典型は、「和歌」です。つまり、「反実仮想」は和歌で多用される表現なのです。
センター試験がよく和歌を出題していますね。私立の難関、早稲田大学しかり、上智大学しかり。受験生、最後の最後は「和歌の勝負」とくれぐれも肝に銘じましょう。
考えてもみてください。「ましかば~まし」に傍線を引いて「口語訳としてふさわしいものを選べ」って、出してもしょうがないでしょ?難関大学の受験生なら当然、点数にします。
「ましかば~まし」とあっても傍線なんか引かない、「和歌の説明」あるいは「本文の内容説明」で聞くといいですね。当然、配点は高い。センター古文なら問6といったところでしょう。点差が決定的に開いてしまいます。上智大学なら○×問題の中に「現実」を入れてもいいですね。本文の内容と合致するもの…なら○になります。
わかりましたか?反実仮想「ましかば~まし=~したなら~しただろうに」はもう卒業してください。反実仮想を訳す時は、必ず現実をだすクセを普段からつけましょう。慣れれば簡単にできます。

形容詞(型)、「ず」の仮定条件を見ておきましょうか。
普通は「未然形+ば(接続助詞)」で仮定条件句を作りますが、形容詞、形容詞型活用助動詞「べし」「まじ」、打消「ず」などは「連用形+は(係助詞)」で仮定条件を表現します。仮定条件については「文法19接続助詞」でまた見ていきましょう。

・鴬(うぐひす)の谷より出づる声なくは春来ることを誰か知らまし
(うぐいすが谷から出てきて鳴く声がなかったら
春がくることを誰がわかるだろうかいや誰もわからないだろうに
現実→(うぐいすが谷から出て来て鳴く声があるので
春が来たことを誰もがわかる。)

ク活用形容詞「無し」本活用連用形「無く」+係助詞「は」で仮定条件、よって「まし」をともなって反実仮想の構文になります。
ちなみに、「誰(たれ)か」と反語になっているので、口語訳、現実の読み取りがちょっと難解ですね。だからこそ「場数」をふまなくてはいけません。一回やったからOK!とはいきません。いろいろな文脈で和歌を読み込んでいく、反実仮想から現実を読み取っていく訓練をしましょう。
反実仮想は和歌で多用されるのでしたね。上記のような和歌があった場合、「春告鳥(はるつげどり)」としてのウグイスをほめたたえている歌だと大意をおさえたい。難関大学は、そこを正確に突いてきます。

・帝の使者として派遣された永実(ながざね)さん、ベテランの女官に連歌をいどみかけられて、みごとに詠んでみせる。そこでご主人さまの帝が発したおことば。
「永実ならずは我が恥ならまし
(つかわしたのが永実でなかったなら、私の恥になっただろうに
現実→(つかわしたのが永実だったので、私の恥にならずにすんだ)
=永実、よくやった!

打消助動詞「ず」連用形「ず」+係助詞「は」で仮定条件、よって「まし」をともなって反実仮想の構文、必ず現実を出してください。
上記の例なら、「和歌を詠め!→すぐに、その場の状況にあわせて巧みに和歌を詠む→幸せ(帝からおほめのおことばをいただく=最高の栄誉)」といった文脈を読み取ってほしいのです。上級編「歌徳譚(かどくたん)」で説明しましょう。
以上、反実仮想について、かなりくわしく見てきました。なぜ、反実仮想が重要なのかわかりましたか?和歌もふくめて文脈の山場、核心部で用いられる決定的な表現だからです。設問になるし、配点も高い。ただし、意味の丸暗記では使い物にならないということです。

くどいようですが、最後にもう一度。
仮定条件句をともなった「まし」は、何だろうがかんだろうが反実仮想です。
反実仮想の構文は、

仮定条件句~まし。=反実仮想(~したなら、~しただろうに。)

とおさえましょう。

 

★★★★【助動詞「まし」ためらいを含む意志】

「まし」とでてきたら反実仮想、といきたくなるのですが、実戦では「ためらい」も同じぐらいよく出ています。国立二次で記述問題とか。
「仮定条件句~まし」はすべて反実仮想と考えるのでしたね。
仮定条件句をともなわず、疑問文(疑問語「いつ・たれ・なに」等、あるいは係助詞「や」「か」がある)であったならためらう気持ちを表す表現です。

疑問文(仮定条件句なし)~まし

   =ためらいを含む意志(~したらよいだろうか)

いづかたに身をたぐへまし
(どちらのお方に身を寄せたらよいだろうか。)
仮定条件句なし(反実仮想ではない)、「いづかた」(どちら)と疑問語がある、よって「ためらい」で訳します。

いかにまし
(どうしたらよいだろうか。)
仮定条件句なし(反実仮想ではない)、「いかに」(どのように)と疑問語がある、よって「ためらい」です。「せ」=サ変動詞「す」未然形。この表現は、途方に暮れた時、慣用的につかわれる表現です。『蜻蛉日記』なんかによく出てきます。で、よく記述で問われます。
受験生に訳させると「どんなに狭いのか」と訳してきます。そこで笑っている受験生もいるかと思うのですが、10人中2、3人ぐらいいますよ。記述でよく聞かれるので、練習してみましょう。

問:次の文を口語訳しなさい。
1.何をか食はまし。
2.これをや奉らまし。

解答
1.何を食べたらよいだろうか。
2.これを差し上げたらよいだろうか。

疑問文だから「ためらい」はダメですよ。だって、反実仮想で反語、なんてよくありますからね。「声なくは~誰か知らまし」って反実仮想の例文あげましたね。
必ず、

仮定条件なし→疑問文→ためらい

と判断してください。

 

★【助動詞「まし」仮想】

仮定条件句をともなわず、疑問文でもなかったらただの仮想の表現と考えましょう。

仮定条件なし(反実仮想ではない)
疑問文ではない(「ためらい」でもない)

仮想…~したらよかったのに…。

・見る人もなき山里の桜花 ほかの散りなむのちぞ咲かまし
(見る人もいない山里の桜花よ、他の桜が散った後で咲いたらよかったのに

「まし」がただの推量(~だろう)、「む」と同じ感覚で用いられる場合もよくあります。基本は推量の助動詞ですからね。でも、推量を聞いたってしょうがないでしょ?わざわざ傍線部訳の問題になっているなら上記の三者と考えてよいでしょう。受験生は戦略的にものごとを考えねば、でしたね。

 

 


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