いよいよ文法の仕上げに入っていきます。三大識別「なり」「なむ」「に」の識別、「なり」からやっていきます。傍線部口語訳の選択肢問題、傍線部に「なり」がある。まっさきに「なり」を識別してください。特にも「なり」が伝聞・推定だったら、それで選択肢を洗えば、選択肢は二者択一になっているはずです。一発で答えが出たらラッキー!です。文法問題でも超頻出。おいしすぎますよ!
★★★★★【「なり」の識別】
〈伝聞・推定の助動詞「なり」〉
1.伝聞・推定の助動詞「なり」…終止形(ラ変には連体形)に接続
伝聞(~そうだ・~ということだ)
…うわさの文脈で用いられていたら伝聞。
推定(~ようだ)
…音、声のする文脈で用いられていたら推定。
【伝聞推定「なり」】→→→文法16推定の助動詞「なり」「めり」
断定の助動詞「なり」
2.断定の助動詞「なり」…体言・連体形に接続
断定(~である)
※「場所なる名詞」の形をとったら存在(~にある)
【断定「なり」】→→→文法17断定の助動詞「なり」
3.ナリ活用形容動詞
4.ラ行四段動詞「成る」
基本は、接続をしっかり確認することです。
・をとこもすなる日記といふものを、
(男の人も書くという日記というものを、)
伝聞の助動詞「なり」連体形。サ変動詞「す」終止形に接続している。
・をんなもしてみむとてするなり。
(女も書いてみようと思って書くのである。)
断定の助動詞「なり」終止形。サ変動詞「す」連体形「する」に接続している。
〈注Ⅰ.文脈から判断する場合〉
終止形と連体形が同じ活用語(四段・上一段・下一段)に接続する場合、および、ラ変(型)活用語の連体形に接続する場合(伝聞推定の「なり」は終止形接続の助動詞だからラ変(型)には連体形に接続)は、断定「なり」なのか、伝聞推定「なり」なのか、接続から判断できません。その場合は、文脈をもとにして判断します。
(a)うわさの文脈だったら伝聞。
(b)音、声のする文脈だったら推定。
(c)それ以外は断定と考える。
(a)「奥山に猫またといふものありて、人をくらふなる」と人のいひけるに、
(「山奥に猫またというものがいて、人をとって食うそうだよ」と人が言ったところ、)
「くらふ」は四段活用で終止・連体同形、接続からはわかりません。話題が山奥の化け物の話だし、まわりの人が言っているところから、うわさの文脈と考え伝聞と判断します。
(b)山のたぎつ瀬音まさるなり。
(山の急流の音がいっそう激しくなるようだ。)
「まさる」は四段活用で終止・連体同形、接続からはわかりません。文脈に「音」とあるから(聴覚による)推定と判断します。ココは難関大学でいちばんつっこまれるところです。「音・声→推定」要チェック。『千載和歌集』『新古今和歌集』以降の和歌で問われます。
〈注Ⅱ.意味が確定する場合〉
(a)「鳴くなり」「衣(ころも)打つなり」の「なり」は推定。
(b)「撥音便(無表記)+なり」は伝聞・推定。
(a)鴨ぞ鳴くなる 山かげにして
(カモが鳴くようだ。山陰で)
「鳴く」は四段活用で終止・連体同形、接続からはわかりません。「鳴く」ということはそもそも音、声がしているわけだから(聴覚による)推定と判断できます。
「衣打つ」は、晩秋、冬の着物を出してトントンたたいてふっくらさせます。今でも布団たたきでバンバンたたいているでしょ?(季節は関係ないけど)たたいているところは見えないけれど、トントン音がする、で、聴覚推定です。
「鳴くなり」「衣打つなり」とも『千載和歌集』『新古今和歌集』などで、多用された表現です。和歌の神様、藤原野俊成、藤原定家の時代です。ということは、中世歌論などで論じられて、早稲田大学、上智大学などの難関大学で、いかにも出題しそうなところです。
(b)駿河の国にあなる山
(駿河の国にあるという山)
「あるなる」の形だったら「ある」はラ変の連体形だから、断定「なり」も伝聞・推定「なり」も接続できます。しかし、ラ変(型活用語)の撥音便(無表記)というのは、すでに見てきたとおり、推定「なり・めり」の上でおこるものなので、撥音便の下に「なり」とあったら、伝聞・推定の助動詞とわかります。ゼッタイ断定ではない。伝聞か推定かは文脈しだいです。
・「あるなり」…文脈から断定か伝聞・推定か判断。
・「あ(ん)なり」…伝聞・推定に確定。
以上、撥音便の無表記パターンをおさえるのがいかに重要か、これでわかりますね。「なり」の識別に決定的にかかわるからです。「撥音便+なり=伝聞・推定」って、文法全体を通じていちばん出るところですが、撥音便を読めないことにははじまりません。
【撥音便無表記】→→→文法16助動詞「なり」「めり」
〈注Ⅲ.形容詞(型)の活用語に接続する場合〉
(a)断定は例外的に本活用の連体形に接続し、
「~きなり」の形をとる。
(b)伝聞・推定の助動詞は補助活用の連体形に接続し、
「~かるなり」の形をとる。
ただし、形容詞(型)の補助活用はラ変に活用するため、撥音便を起こし、「~かんなり」、さらに無表記となって「~かなり」の形をとる場合もあります。
撥音便をおこさず「~かるなり」の形でも、形容詞(型)補助活用の連体形に接続しているので伝聞・推定と判断できるし、撥音便をおこして「~か(ん)なり」となっても先の注Ⅱ(b)から伝聞・推定と判断できます。
(a)艮(うしとら)の方より吹き侍れば、この御前はのどけきなり。
(北東の方角から風が吹きますので、こちらの御前は穏やかなのだ。)
ク活用形容詞「のどけし」本活用連体形「のどけき」に接続しているので、断定。
ちなみに、これは、形容詞の本活用に助動詞が接続する唯一の例外です(ふつう、助動詞は補助活用に接続します)。
【形容詞の補助活用】→→→文法入門6形容詞
(b)安らかに身をふるまふことも、いと罪重かなり。
(気楽にふるまうのもたいそう罪が重いということだ。)
ク活用形容詞「重し」補助活用の連体形「重かる」が、ラ変型活用語であるため撥音便をおこして無表記になっています。「撥音便+なり」から伝聞・推定と判断できます。
たとえ撥音便をおこさず「重かるなり」の形でも、補助活用の連体形に接続していることから、断定ではない(断定は上述のとおり、本活用連体形に接続する)、伝聞・推定と判断できます。細かいな。でも、ココまでおさえておけば、あとは何をどうきかれても対応できるはずです。難関大学の突っ込みポイントですよ。
・蚊やり火ふすぶるもあはれなり。
(蚊遣り火がくすぶっているのもしみじみと趣き深い。)
ナリ活用形容動詞「あはれなり」の活用語尾です。「~なり」で言いきって、様子、状態を表現していたら形容動詞です。
主な形容動詞は重要単語としておさえているはずですから、文法的にアプローチしなくてもだいたい形容動詞とわかるはずです。
ちなみに「~げなり」の形は形容動詞ですよ。「げ」ってきたら形容動詞とおさえましょう。「きよげなり」「うつくしげなり」など、形容詞を形容動詞化し、意味は形容詞と同じです。
・子となり給ふべきひとなめり。
(私の子お成りになるはずの人であるようだ。)
四段動詞「成る」連用形「なり」。「なめり」の「な」は断定「なり」連体形「なる」の撥音便の無表記です。
四段動詞「成る」は、だいたい「~に成る」「~と成る」の形をとります。他に「生(な)る」(=実る)、「慣る」(=慣れる)、「鳴る」等の動詞が考えられますが、いずれにしろ文脈上、なにか動作を表現しているはずです。
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