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形容詞・形容動詞は語幹の独立性が強く、語幹をもとにいろいろな表現を作っていきます。そのとき問題になるのが「シク活用形容詞の語幹」をどう定義するか、です。入門編で述べてきたとおり、語幹構文を一つでおさえたいので、シク活用については「語幹」と「終止形」は同じカタチ、として解説していきます。
シク活用形容詞は、終止形と語幹が同じ形になる。
★【形容詞・形容動詞の語幹を用いた感動、詠嘆の構文】
〈「あな(感動詞)」+形容詞・形容動詞の語幹〉
=感動、詠嘆(ああ~だなあ。なんと~ことよ。)
・あな、をさな。(ああ、子供っぽいことだなあ。)…ク活用形容詞「をさなし」語幹「をさな」
・あな、いみじ。(なんと、ひどいことだなあ。)…シク活用形容詞「いみじ」語幹「いみじ」
・あな、あはれ。(ああ、悲しいことだなあ。)…ナリ活用形容動詞「あはれなり」語幹「あはれ」
・物語文のクライマックス
・説話の最後のお説教(教訓)
・枕草子など、即興系文学のオチ
と、漢文にも通底しますが、感動、詠嘆の表現は問題文の「いちばんオイシイところ」、つまり文脈が盛り上がったところで用いられる表現、だから設問にからみやすいのです。
つまり、本文最初の「経緯」の説明ではなく、本文最後の、ドラマのクライマックス、主張で用いられる傾向があります。
直接傍線を引いて解釈、という問題にはならなくても、結局、上記「物語のクライマックス」「説話のお説教(教訓)」「オチ」読めてる?という要約系の設問になっていきます。センター古文なら「問5・6」あたりですね。文脈全体の把握のために、おさえておきたい表現です。
ちなみに、「クライマックス」といいましたね?
「感動、詠嘆」の頂点で用いられる表現は?
わかりましたか?
古文なら「和歌」です。つまり、「和歌まわり」で用いられる表現なのです。センター古文、早稲田、上智、国立二次、最終的には文脈の中できちんと和歌を解釈できるか、和歌が合否をわけていきます。
★【形容詞・形容動詞の語幹を用いた連体修飾の構文】
〈形容詞、形容動詞の語幹+「の」+体言(名詞)〉
=連体修飾(連体形の感覚で訳す)
・憎(にく)の男=憎き男(憎い男)
…ク活用形容詞「憎し」語幹「にく」
・をかしの御髪(みぐし)=をかしき御髪(すばらしい髪)
…シク活用形容詞「をかし」語幹「をかし」
・とみの事=とみなる事(急な用事)
…ナリ活用形容動詞「とみなり」語幹「とみ」
ちょっと気をつけて見れば、しょっちゅう文脈で用いられています。この連体修飾の構文を、連体形の感覚で読んでいくクセを普段からつけましょう。訳し間違えると、決定的な誤読につながります。
やってみましょうか。
・とみの事=とみなる事 (急な用事)
形容動詞「とみなり」が連体修飾しているだけだから、連体形「とみなる名詞(体言)」の感覚で訳せばいいだけです。でも、この構文が取れない受験生が、どう解釈するかというと、
「富の事?…ああ、財産とか、金銭のこと言ってるのね!」
こうして、たった一箇所、初歩的な構文を誤読することで、文脈を全然違う方向へと読み進めてしまう。
で、結局最後まで読んで、
「アレ?なんかおかしい…もう一回よみなおしてみよう」
で、時間と点数を落としていきます。
★★★★【形容詞の語幹を用いた原因、理由の構文】
…和歌のみで用いられる。
〈体言(名詞)+「を」+形容詞の語幹+「み(接尾語)」〉
=原因、理由(名詞+が+形容詞+ので、)
・瀬を早み岩にせかるる滝川~ (瀬の流れが早いので~)
・野をなつかしみ~ (野が心ひかれて離れがたいので~)
センター古文、早稲田、上智、国立二次、和歌の文脈を好む大学です。出る確率がかなり高いです。和歌でしか用いられない(地の文では使われない)構文ですからね。
和歌は定型詩、字数制限がありますから、よく省略がおこります。「を」が省略されたり、「名詞を」の主部が省略されたりします。
・山高み … 山(を)高み (山が高いので)
・逢ふこともなみだに浮かぶ我が身には~
(かぐや姫、あなたと逢うこともないので、悲しみの涙に浮かんでいる我が身には~)
※「涙」の「なみ」に「無み」が掛けられている。
と、だんだん難しくなるでしょ?
いちばん難しいのは、ク活用形容詞語幹が「かな」で書かれた場合です。上記の例だと「瀬をはやみ」と「かな」で書かれると、途端に難しくなります。まして「なみだ」なんて掛詞になったら、かなり演習量をやりこんだ受験生でもキビシイ。早稲田、上智などの難関大学はそのレベルで点差が開いていきます。早稲田などの難関大学の古文の難しさは、「かな」にあります。
この構文、ク活用形容詞語幹の訳出のポイントは、和歌で訳を聞かれて、訳せない「み」があったら、「し」をくっつけてみて、ク活用形容詞ではないか、確認してみることです。上記の例なら「はやみ?→早し!」「なみ?→無し!」といった具合です。受験生は戦略的にものごとを考えるようにね。
上記の「~を~み」構文は、和歌にまつわる表現の中でも、最重要構文です。いろいろな和歌にまつわる文脈を読み抜いて、さまざまな和歌で「~を~み」構文を訳す練習をしていきましょう。
受験生、最後の最後は演習量の勝負!
といっている意味が分かりますね。この構文は、まさしくその「演習量」をはかるバロメーターになります。
以上、これらの語幹の構文で、最後まで悩ましいのは「ク活用形容詞の語幹」だ、ということは肝に銘じておきましょう。シク活用形容詞は語幹と終止形が同じなので、構文さえわかっていれば訳せます。
ク活用形容詞の語幹に注意!(特にかな書き)
『枕草子』
大納言に連歌(上の句、下の句を別々の人が詠みあう)をいどまれた清少納言、
すぐに機転をきかせて句をつけてみせる。
「あな、と」
と、みんなにほめられる。
下線部を訳せますか?
「あな(感動詞)、と(ク活用形容詞「疾し」語幹「と」)」
感動、詠嘆の構文です。
「疾(と)し」…(早い)
「なんと早いことだ!」
文脈のヤマ場で用いられているの、わかりますか?
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