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古文のツボ

中級編

古文 文法17 断定の助動詞「なり‣たり」 比況の「ごとし」

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ここで断定の助動詞「なり」連用形「に」をしっかりおさえましょう。断定「たり」はあっさりふれます。漢文がある人は比況の助動詞「ごとし」は最重要事項です。助動詞の最後のヤマ場です。いわゆる三大識別問題「なり」「なむ」「に」のうち、「なり」と「に」に決定的にかかわります。

★★★★★【断定「なり」の連用形「に」】

「助動詞」とは読んで字のごとく、「動詞をお助けすることば」なのですが、例外的に体言(名詞)・連体形に接続する、それが断定の助動詞「なり」です。活用は形容動詞ナリ活用とまったく同じです。
センター古文、問2で頻出しています。
体言・連体形に接続し、「にあり」の形で「である」、「にて」の形で「であって」と訳せる「に」は断定の助動詞なりの連用形です。

・体言・連体形+に(断定「なり」連用形)+あり(補助動詞)
    =~である…断定

・体言・連体形+に(断定「なり」連用形)
    +侍り・候ふ(丁寧の補助動詞)
    =~でございます…断定の丁寧表現

・体言・連体形+に(断定「なり」連用形)
    +おはす・おはします(尊敬補助動詞)
    =~でいらっしゃる…断定の尊敬表現

「にあり」で断定を表現していたものが「なり」になったといわれています。断定「なり」の古い形なのですが、この古い「にあり」もいつまでも残っていく、で、いつも「あり」の上にあるから「に」を連用形としました。
「にあり」とはいっても、実際は接続助詞や係助詞が間に入って使われます。

・「体言あり。」(体言である。)…接続助詞
・「体言こそあれ。」「体言ある。」(体言である。)…係助詞

なんて具合です。

・~に+や・か(疑問の係助詞)+あら+む(推量助動詞連体形)。
    =~であろうか。…断定の疑問

などその典型例です。コレが出ます!断定の疑問などしょっちゅう使われるので、よく省略されます。

・~にや(か)。…「あらむ」の省略

で、「に」に傍線、識別問題でいちばん出るところです。
実際に出題されたセンター古文、問2です。
「おのづから慰むかたもあるにや、」
いずれ 『文法25「に」の識別』のところで徹底的に解説していきましょう。とりあえず、「にや(か)。」で「に」が断定「なり」の連用形と説明できるように。「~であろうか」と断定の疑問を訳せるように。解釈の問題にもなります。

ちなみに、「あり」が補助動詞ってナンデ?という素朴な疑問もわいてくるでしょう。敬語の感覚からすれば動詞にくっついて「補助動詞」じゃないの?と。
へ理屈を言いましょう。動詞の定義は「動作(~する)・存在(いる・ある)」をあらわすのでしたね。ところが、上記の「あり」「はべり・さぶらふ」「おはす・おはします」はいずれも「動作・存在」の表現ではありません。断定の表現です。で、動詞とはいえないだろう、しょうがないから「に」にくっついて断定を補助する補助動詞、と考えたわけです。

・わが身一つの秋あらねど
(私だけに訪れた秋はないけれど)

このように、「にあり」の形とは言ってもほとんどの場合「に」と「あり」の間に接続助詞や係助詞などがはさまるのは上述したとおりです。ここでは係助詞「は」がはさまっています。
「に()あり」で断定、とは言っても、カタチで判断してはいけません。必ず訳してみて「~である」と断定していることを確認すること。カタチが同じでも以下のような場合があるからです。

「にあり」の形でも、存在を表していたら、「に」は格助詞、「あり」は普通の動詞です。
・ペンは机の上にあり

「に侍り(候ふ)」の形でも、存在を表していたら、「に」は格助詞、「侍り・候ふ」は本動詞「あり」の丁寧「あります・ございます」。
・テキストは机の上に侍り

「に侍り(候ふ)」の形でも、「貴人の前に~・貴所に~」という文脈だったら、「に」は格助詞、「侍り・候ふ」は本動詞「仕ふ」謙譲「お仕え申し上げる・ひかえる」。
・清少納言は中宮定子様にさぶらふ女房なり。

「におはす(おはします)」の形でも、存在を表していたら、「に」は格助詞「おはす・おはします」は本動詞「あり」尊敬「いらっしゃる」。
・校長先生は校長室におはします

以上、説明がこまかくなりましたが、出る事項は徹底的に!という方針でしたね。

断定連用形「に」のもう一つのパターンに「にて」があります。

・体言・連体形+に(断定「なり」連用形)+て(接続助詞・=and)
  …~であって

必ず訳して、「~である。そして~」「~であって」と断定を確認するのがミソです。

・(かぐや姫)「月の都の人にて父母あり。」
(わたくしは月の都の人である。そして月には父母がいる。)
(わたくしは月の都の人であって、月には父母がいる。)

ゼッタイにカタチで判断してはいけません。訳して断定を確認すること。
まったく同じ形ですが、体言・連体形に「にて」と接続し動詞にかかっていったら格助詞「にて」です。連体形の場合は何か体言が補えるはずです。

体言・連体形+にて(格助詞)→動詞

動詞に対して場所や時間、原因などを表現している。

・「間もなく体育館にて全校集会を行います。生徒の皆さんは~」
なんてアナウンスが学校でもよくかかりますね。古文も現代語も同じです。「体育館」と体言に接続し、「行う」という動詞にかかっていく、これが格助詞です。
この「動詞にかかっていくか、いかないか」が格助詞と断定を判断するミソです。断定「にて」は「~である。そして~」と文がいったん完結するのに対し、格助詞「にて」は必ず動詞にかかっていくのです。
受験生がイチバン悩ましいところでしょ?
格助詞「にて」の「に」だけに傍線を引くと、受験生はみんな「断定」とひっかかります。「ひっかけ」の王様なのです。
断定の連用形「に」をとるポイントは、

・体言・連体形+にあり …~である
・体言・連体形+にて …~である。そして、→~であって

と、訳してみて断定を確認することです。「格助詞」と判断するときには、必ず動詞にかかっていることを確認してください。わかりましたか?さらに詳細は『文法25 「に」の識別』にて。

【ワンポイント アドバイス】

「に」「にて」の識別で迷ったら…

・かかっていく動詞がない、「である」と訳せる。→断定

・かかっていく動詞がある。→格助詞

〈断定の助動詞「たり」〉

特に解説する必要はないかな。お手持ちの古典文法書をさらっと見てください。
「学級委員長たる者が、何をやっているんだ!」
断定(資格)~である
の意味で、今も使っています。
『平家物語』など、漢文調の文体で用いられます。

〈助動詞「ごとし」の意味〉

比況(~のようだ。~と同じだ。)
・AはB(名詞)のごとし。
・AはBする(連体形)がごとし。
(AはBのようだ。)(AはBと同じだ)

「比況」とは、「比べ況(たと)える」こと。AをBに「なぞらえる」こと。古文ではさほどではないですが、漢文では最重要です。返読文字(必ず返って読む字)の「若・如」の白文読みに決定的にかかわります。

〈比較形〉
・A不若(如)B。…AハBニ若・如(し)カズ。
(AはBに及ばない。AよりBの方がましだ。)
A<B
例:百聞不如一見。…百聞ハ一見ニ如カズ。
(百聞は一見に及ばない。)

〈比況形〉
・A若(如)B。…AハBノ(ガ)若・如(ごと)シ。
(AはBと同じだ。AはBのようだ。)
A=B
例:疾如風。…疾(はや)キコト風ノ如シ。
(早いことは風のようだ。)

横書きの漢文はさすがにキビシイな。
比較形は不等号の関係、比況形は等号の関係です。
この「若(如)」は副詞で「もシ~(バ)」と仮定形も作るので本当にナンギな字ですが、だからこそ漢文でイチバン問われますね。いつか「漢文のツボ」で解説しましょう。
「比況」の位置づけ、よろしいですか?

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