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古文のツボ

中級編

古文 文法15 助動詞「らむ」(現在推量/原因推量)

 

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助動詞「らむ」の現在推量はさほどでもない、原因推量がムズカシイ。「覚えればおしまい」という文法事項ではありません。また、和歌で多用され、難関大、センター古文で問われます。古典文法最後のヤマ場ですので、わからなかったら、「こんな感じ」で流していいと思います。演習量を積んで、和歌まわりの文脈をたくさん読んだら、またココに戻ってきてください。

 

★★【「らむ」…現在推量】

現在推量…目の前にない今現在の事実を推量する。(今ごろ~しているだろう)

目の前にない、今現在の事実について推量する、ということは、反対に言えば、推量の対象になっているその事実は、眼前にはありません。
「今ごろ、お母さんと子どもたちが晩ご飯食べているだろうな…」って言いながら、残業しているお父さん、というシチュエーションです。古文で見てみましょう。

・(須磨に都落ちした光源氏は)内裏(うち)を思しやりて「(殿上人の)名対面(なだいめん)は過ぎぬらむ
(光源氏は宮中をご想像なさって、「殿上人の名対面(夜の点呼)は今ごろすんでしまっているだろう。」)
「思ひやる(尊敬)→思(おぼ)しやる」(想像なさる)という表現があるから、宮中での事実は眼前にない、現在推量とわかります。

 

★★【「らむ」…原因推量】

原因推量…目の前に事実があって、眼前の事実の背景、原因となっているものを推量する。必ず原因を表す表現をともない、原因を表す表現と眼前の事実を表す表現とがセットになって表現される。原因と事実の表現を確認するのがポイント。

 

●原因を表す表現(「已然形+ば」「形容詞語幹+み」「~て(接続助詞)」等)をともなって
…<原因>ので、<事実>しているのだろう

●原因を問う疑問語(「など・なに」等)をともなって
…<原因を問う疑問>どうして<事実>しているのだろう

目の前にある、今現在の事実の背後にある原因を推量するということは、反対に言えば、原因推量なら、事実は目の前にあるということです。
「あれ~?顔色が悪いよ」
「風邪をひいているので、顔色がわるいのだろう。」と心配してくれる友達。その原因が想像できなければ、
「どうして顔色がわるいのだろう。」になっていきます。

 

「形容詞語幹+み」原因・理由の構文

↓ ↓ ↓
文法2「形容詞の語幹構文」

 

接続助詞「て」が原因・理由をあらわすのは、現在も同じです。「どうして遅刻したんだ?」「いや、電車が遅れ…」って言い訳しますよね。
古文で見ていきましょう。

・いにしへを恋ふる涙の染むればや紅葉(もみぢ)の色もことに見ゆらむ
(恋人との昔を懐かしく思って流す涙が染めるので、紅葉の色もとりわけ美しく見えているのであろうか)
※「見ゆ」とあるので眼前の事実=原因推量とわかる。
「いにしへを恋ふる涙の染むれば」…<下二段動詞「染む」已然形「染むれ」+「ば」=原因>
「紅葉の色もことに見ゆ」…<事実>

など時鳥(ほととぎす)声絶えぬらむ
どうしてほととぎすの声が絶えてしまっているのだろうか。)
※「時鳥声絶えぬ」というのはその場における目(というか耳)の前の事実。原因推量とわかる。
「など」…<原因を問う疑問>
「時鳥声絶えぬ」…<事実>

「~ので~しているのだろう」という原因の推量、原因がまったくわからなかったら「どうして」という原因を問う疑問にかわるだけです。

以上、「らむ」の現在推量/原因推量ってムズカシイでしょ?前者は「目に見えない現在の事実」、後者は「目に見えている現在の事実の原因」、目に見えないものを推量し、「思ひ遣る」(想像する)点では共通します。だから、表現として詠嘆的なものになる。だから、和歌で多用されるのがわかりますか?
さらに難解になっていきますよ。

 

★★【「らむ」…原因推量の疑問語の省略】

和歌は「五七五七七」の定型詩。だからよく省略がおこります。
そのため和歌の原因推量の表現で、疑問語「など」「なに」等が省略されてしまう場合があります。その場合はこちらで「など」「なに」等、疑問語を補って原因推量で解釈しなくてはなりません。

・ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ
(光穏やかな春の日にどうして落ち着いた心もなく桜の花は散っているのだろう
※「ひさかたの」は枕詞、訳しません。

嵐の日ならともかく、光穏やかな春の日に、目の前にない遠くの場所で桜の花がバラバラ散っているだろうという現在の推量は成り立たないのではないでしょうか?
そうである以上、「しづ心(落ちついた心)なく花の散る」は眼前の事実としか考えられません。眼前の事実について「らむ」といっているのだから原因推量でしょう。でも、原因の表現がどこにもありません。だったら、原因を問う疑問語「など」「なに」等を自分で補って「などしづ心なく花の散るらむ」と原因推量で解釈します。
「など」…<原因を問う疑問>(省略)
「しづ心なく花の散る」…<事実>

以上、メンドーでしょ?
だから、特に和歌では、パッと見、現在推量か原因推量かわかりません。その判断基準は一点、「眼前の事実」です。

「現在推量/原因推量」を見分けるポイント!
=「事実」が眼前にあるか、ないか。

だから、和歌にまつわる多様な文脈を読み抜いていかなくてはならない、「場数」の勝負です。
では、実際の入試でどのように使えるか、見てみましょう。

 

【実戦演習】

2007年度のセンター試験、和歌の説明問題で出ています。

<本文>
初霜も置きあへぬものを白菊の早くもうつる色を見すらん
<設問>
問4
傍線部B「初霜も置きあへぬものを白菊の早くもうつる色を見すらん」という和歌の説明として最も適当なものを、次の1~5のうちから一つ選べ。

1.兵部卿の宮に夢中になっている新婚の姫君に対して、「初霜もまだ降りないのに、どうして白菊は早くも別の色に染まっているのだろうか」と、ひやかして詠んだ。
2.宮仕えで気苦労が絶えないことを姫君に打ち明けたくて、「初霜もまだ降りないけれども、白菊は早くもよそに移りたがっているようだ」と、暗示するように詠んだ。
3.描いた白菊を姫君がすぐに塗りつぶしてしまったことに対して、「初霜もまだ降りないのに、どうして白菊は早くも色変わりしているのだろうか」と、当意即妙に詠んだ。
4.白菊を黒い色に塗り替えた姫君の工夫を理解して、「初霜もまだ降りないけれども、庭の白菊は早くも枯れそうな色に染まってしまったようだ」と、臨機応変に詠んだ。
5.色を塗り替えられた白菊から容色の衰えはじめた女性の姿を連想して、「初霜もまだ降りないのに、どうして白菊は早くも色あせたのだろうか」と、冗談半分に詠んだ。

和歌をよく見てください。「見す(見せる)」とあるから、白菊が「うつる(色あせる・色が変わる)」のは目の前の事実とわかりますね。よって原因推量です。
原因推量は必ず原因の表現とともに使われる、でも、原因の表現がどこにもありません。だったら原因を問う疑問語「など」「なに」等の省略、補って解釈するのでしたね。

など白菊の早くもうつる色を見すらん
どうして白菊は早くも色変わりするようすを見せているのだろうか

原因推量を訳しているのは「1」「3」のみ。二者択一にしぼれます。これが「道具」として文法を使うということです。解答は「3」でした。
【語釈】
・動詞+あふ…終わりまで・すっかり~しきる
・うつる…色あせる・心変わりする※「上級編古文単語のツボ」で詳述しましょう。

二者択一、後は文脈から正解、って、典型的なセンター試験の五者択一問題ですね。
本文はあげないので、ここから先の解説はしませんが、この問題、実は、一発で答えが出てきます。
このセンター試験の三日前に当時書いていたブログで、

和歌の評価は「当意即妙」で決まり、「臨機応変」じゃないよ、

と書いたら、ひっかけの選択肢まで当たってしまいましたね。この問題はかなり和歌をめぐる本文を演習した人でないと難しいでしょう。だから、何度も言うとおり、「場数」なのです。
「和歌の評価」については、上級編で述べましょう。

 

 


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