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入門編

古文 文法入門6 形容詞の活用

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用言(動詞・形容詞・形容動詞)の活用をここでしっかりやっておけば、助動詞に行ってからラクです。ここをおろそかにすると、文法問題の得点源、「助動詞の識別」にいって必ずつまずきます。まずは動詞の活用はしっかり覚えられましたか?

そうしたら、形容詞の活用をやっていきます。古典文法書の「形容詞」を開いてください。形容詞をおさえるポイントは、右側の活用「本活用」と左側の活用「補助活用(カリ活用)」をしっかり言えるようにすることです。なんとなく…はダメ!です。特にも補助活用の活用と定義、しっかりおさえましょう。

【形容詞とは?】

形容詞=ものごとの様子・状態・性質をあらわし、言い切り(終止する形)が「し」で終わる。

「あんなだよ」「こんなだよ」とありさまを表現して、「~し」(「~じ」もある)で終わるのが形容詞です。書いて字のとおり、物事を形容するコトバです。

〈形容詞の本活用〉

未然…(く)
連用…く
終止…し
連体…き
已然…けれ
命令…○

未然形の「く」がカッコ付きになっているのは、形容詞の未然形を認める立場と認めない立場があるからです。「未然形+ば(接続助詞)」は仮定条件(もし~ならば、)を表す、というのは動詞の活用で見てきましたね。

形容詞の仮定条件は、

・形容詞「無し」→仮定条件→「なくは」
例:銭なくは、もの買ふまじ。
(お金がなかったら、物を買うことはできないだろう。)

というカタチをとります。これを説明するのに、

・形容詞本活用未然形+接続助詞「ば」(濁音が清音化して「は」になる)
・形容詞本活用連用形+係助詞「は」

と、二つの説明の仕方があります。これは教える側の立場の問題で、あなたたち受験生が悩む必要はありません。ただし、形容詞の仮定条件は、実際の入試では超頻出事項ですので、みなさんはしっかりと訳せるようにしてください。訳せればそれでいい。さらに仮定条件は、最重要文法事項「反実仮想」、副助詞「だに」の最小限の条件と、重要構文に絡んでいきます。詳細は中級編で見ていきましょう。

わたしは後者、「本活用連用形+係助詞『は』」で解説していきますが、「未然形+ば」のにごりがとれた形だ、と教わったのならば、それでかまいません。活用形が問われることはないし、問うてはいけません。
これが「本活用」と言われる、形容詞本来の活用です。

活用をしっかり覚えましょう。活用をおさえるコツはブランクに「マル」を入れて覚えること。

「く・く・し・き・けれ・マル」

です。未然形は認めない立場で説明しますが、一応、入れて覚えましょうか。未然形を「マル」で覚えてもいっこうに構いません。

〈形容詞の補助活用〉

形容詞は「ものごと」の様子、状態の表現だ、と定義しましたね。つまり、「助動詞」とはくっつかない、ということになります。「助動詞」は、漢文調で読めば「動(詞)ヲ助ク」、つまり基本的に動詞をお助けするコトバだということです。

・「形容詞」は「ものごと(名詞)」とセットになりたい。
例:「良き人」「花良し」

・「助動詞」は「動詞」とセットになりたい。
例:「食ふべし」「行かむ」

だから、ムリムリくっつけると、
「良くけり」「良くず」
と、くっつきません。だから、間に接着剤の働きをする補助動詞「あり」を入れてくっつけていったのです。
「良くありけり」
「良くあらず」
ホラ、くっついた!それが縮まって、
「良くありけり」→「良かりけり」
「良くあらず」→「良からず」
と、「補助活用」ができていきました。音が「カラカリ…」とつづくため「カリ活用」などと言われたりもします。
あくまで助動詞につなげるために作った補助的な活用なのです。
ここで、しっかりおさえたいのは、補助活用の定義です。

形容詞の補助活用…
・下に助動詞をともなう。

・ラ変型に活用する。

もともと形容詞の連用形「~く」にラ変動詞「あり」がくっついたものだから、活用はラ変型に活用するのです。

未然…から
連用…かり
終止…○
連体…かる
已然…○
命令…かれ

「助動詞」に接続するために作った活用だから、「終止形」はありません。なぜか?形容詞補助活用は「ラ変型活用」でしたね?「ラ変の終止形」に接続する助動詞は「存在しない」。なぜなら、終止形接続の助動詞はすべて、「ラ変には連体形に接続する」から。だから、動詞の活用の種類で、ラ変は特殊だよ、って説明しておいたわけです。受験生がみんな「???」ってなるところだから、細かい説明をしていますよ。

例:形容詞「良し」+終止形接続の助動詞「べし」
→「良かる(ラ変型活用語連体形)べし」
例:形容詞「良し」+終止形接続の助動詞「めり」
→「良かる(ラ変型活用語連体形)めり」

終止形接続の助動詞「べし・らむ・らし・めり・まじ・なり(伝聞推定)」は、すべて、ラ変型活用語には連体形に接続します。よって、形容詞補助活用(ラ変型)にも連体形に接続します。
なぜ、こんなに細かい説明をしているかというと、受験生、古典文法克服の最大のヤマ場、【推定の助動詞「なり」「めり」にともなう撥音便の無表記】があるからです。詳細は「中級編」で見ていきましょう。

そうすると、「已然形」もないではないか、という疑問もわいてきます。やはり、「已然形接続の助動詞」は存在しない。一部の例外を除けば。

・完了存続の助動詞「り」…サ変の未然形、四段の已然形のみに接続
※「さみしい『り』」とか、「リカちゃんサミシイ」とか、習いませんでしたか?

つまり、「四段の已然形」に接続する助動詞「り」はあるけれど、それ以外の已然形に接続する助動詞はない、ということです。

じゃ、なんで、「かれ」は補助活用なんですか?という疑問もあるかな。
「形容詞」は、「ものごとを形容する」から、命令するカタチは本来、存在しない。本活用命令形が「○」になっていますね。
補助動詞「あり」をくっつけて「動詞っぽく」した際に、命令形も作ったんですね。

「我が校の生徒諸君!誇り高くあれ!」→「高かれ!」

なんて、今でも使っているんじゃないですか。

ちなみに、あなたたちが勉強している「古文」って、千年前の関西弁を勉強しているわけですが、「方言」って、いろいろ古文の表現が残っています。博多弁で、形容詞「良し」を「よかよか~」とか言いますね。これって、形容詞の補助活用の名残でしょ?

「良かるなり(「なり」は伝聞推定の助動詞)」→撥音便→「良かんなり」→無表記→「良かなり」

とかの表現が九州に渡って「良か~」と残っていったのでは。九州の生徒のみなさん、いかがでしょ?

【「ク活用」と「シク活用」】

簡単に活用を見ます。詳細は古典文法書を見てください。

<ク活用>

本活用…く・く・し・き・けれ・○
補助活用…から・かり・○・かる・○・かれ

<シク活用>

本活用…しく・しく・し・しき・しけれ・○
補助活用…しから・しかり・○・しかる・○・しかれ

基本的に「ク活用」に「し」をくっつければ、「シク活用」になるので、形容詞の活用については、

・ク活用をしっかり覚える!シク活用は「し」をくっつけるだけ!

でよいです。ただ、終止形だけ違うのがわかりますか?
<ク活用>
く・く・し…
から・かり・○…
<シク活用>…「し」をくっつけると、
しく・しく・しし←おかしい!
しから・しかり・○

となります。終止形だけおかしい。だから、ほぼ同じだけれど、わざわざ「ク活用」と「シク活用」を区別しているのです。
学校で、「ク活用」「シク活用」の識別、ってやりましたか?

〈「ク活用」と「シク活用」の見分け方〉

「て」「は」にくっつけてみる。
形容詞「良し」…「よくは」「よくて」
←「く」でくっつくのは「ク活用」
形容詞「美し」…「美しくは」「美しくて」
←「しく」でくっつくのは「シク活用」

識別する意味はさほどないのですが、形容詞は古文解釈、特にも和歌解釈で重要な「形容詞の語幹構文」を作っていきます。そのとき、「シク活用の語幹」は、必ず受験生が「???」となる所です。ここでしっかりおさえましょう。

・「シク活用形容詞の語幹」は終止形と同じ形になる。

この一点です。
上記、ク活用形容詞「よし」の語幹は「よ」ですが、シク活用形容詞「うつくし」の語幹は「うつく」ではなくて、「うつくし」ということです。例えば、形容詞の語幹構文「名詞++形容詞語幹+」は「名詞形容詞なので、」と原因理由を表します。

例:「潟(かた)」(干潟無くなるので
…ク活用形容詞語幹「無し」語幹「な」+接尾語「み」

例:「野なつかし」(野原心ひかれて去りがたく思われるので
…シク活用形容詞「なつかし」語幹「なつかし」+接尾語「み」

和歌で使われる超重要事項です。必ず問われます。

「ク活用は形容詞語幹+み」「シク活用は終止形+み」と説明する立場もあるのですが、これでは構文が二つになってしまう。「形容詞語幹+み」と構文を一つでおさえたいので、シク活用については「語幹=終止形」の立場で説明していきます。学校で「シク活用形容詞は語幹と語尾の区別がない」と教わっている人も、実戦文法では上記に従ってください。詳細は中級編にて。

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