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「す」「さす」「しむ」の使役の判断のポイントは、必ず「使役対象」を確認することです。古文は「~に」、漢文は「~ヲシテ」で使役の対象を表します。使役の対象には、基本、人物(一部、使役可能な動物)がきます。犬は使役可能ですが、猫はムリでしょ?尊敬をおさえるポイントは、後の敬語の項で「最高敬語(二重敬語)」をしっかりおさえることです。
★★★【助動詞「す」「さす」「しむ」の意味】
四段・ナ変・ラ変の未然形には「す」が、それ以外の未然形には「さす」が接続します。意味はまったく同じ、接続がちがうだけです。「シナラ・す」と覚えましょう。
ちなみに、「しむ」は何だろうが未然形に接続します。「す・さす」より時代が古いだけです。漢文の使役の助字「使・令・教・遣」(シレーキョーケンと覚える)は必ず「しム」ですから、漢文がある人はよくよく注意しましょう。漢文の白文読みの王様です。
「す・さす・しむ」ともに意味、用法は同じ。使役の構文も尊敬の用法もまったく同じ。「しむ」だからといって特別な意味はありません。
〈1.使役〉
(使役対象)に 動詞 す・さす・しむ = 使役対象に動詞させる
して
「使役」とは、自分自身でやらないで、ナニモノかをこき使って「やらせる」表現です。である以上、必ず「やらせる」ナニモノか、使役する対象が存在するはずです。使役の対象は格助詞「に」「して」で示します(漢文なら「使役対象ヲシテ動詞未然形シム」と、必ず「ヲシテ」で示します)。
ただし、文脈上、あるいは常識的にわかりきっているものは省略されるので、読解する際には注意が必要です。
・妻(め)の女(おうな)に預けて養はす。
(妻であるおばあさんに預けて(かぐや姫を)育てさせる。)
四段動詞「養ふ」未然形「養は」、「シナラ」の未然形だから「す」が接続しています。使役対象「妻の女」が格助詞「に」で明示されています。
〈2.尊敬〉
・尊敬、謙譲の敬語動詞に付いて、尊敬、謙譲にかかわらず敬意を強める働きをします。「給はす」「のたまはす」「聞こえさす」等、意味は変わらない、ただし敬意が強まります。後の「敬語4敬語動詞の敬意の強さ」で詳述しましょう。
・「(さ)せ給ふ」「(さ)せおはします」(~なさる・お~になる)の形で最高敬語(二重敬語)を表現する。後の「敬語3「皇族の敬語表現」で詳述しましょう。
つまり、上記の内容から言えることは、「す」「さす」「しむ」が尊敬で用いられる場合は必ず敬語動詞とセットになる、ということです。「す」「さす」「しむ」単独で尊敬の意で用いられることはありません。よって、敬語動詞をともなわない単独の用法は使役に決まります。(「す」「さす」「しむ」の前後を見て敬語動詞がなかったら使役に決まるということです。)必ず使役対象がいるはずです。いなければ省略されています。
「す」「さす「しむ」 単独用法は使役に決まり!
上記の例文、「~養はす。」とありますね。「す」の前にも後にも(後はないけど)敬語がありませんね。パッと見て一発で使役とわかります。
・まかでなむとし給ふを、暇(いとま)さらに許させ給はず。
((桐壷の更衣は宮中から)退出しようとなさるが、
(帝は)お暇をまったくお許しにならない。)
※「なむ」=強意「ぬ」未然形「な」+意志「む」=強い意志
四段動詞「許す」未然形「許さ」、「シナラ」の未然形だから「す」が接続しています。「せ」(尊敬)「給ふ」(尊敬)、尊敬を重ねて、最高の尊敬表現を作ります。最高の尊敬表現なので、動作をしているのは最高のお方、主語は「皇族」と決まります(例外はいくらでもありますが…)
会話文・手紙文では一般的に敬意が強まる傾向にあるため、「せ給ふ」「させ給ふ」とあっても必ずしも最高敬語とはかぎりません。普通の尊敬表現「給ふ」の感覚で使われたりします。つまり、「地の文、最高敬語、主語は帝(皇族)」という判断はアリですが、「会話文、『(さ)せ給ふ』、主語は皇族とはかぎらない」としかいえません。
たとえ主語が帝(皇族)で「せ給ふ」「させ給ふ」の形をとっていても、使役対象がいる(想定される)場合は「せ」「させ」は使役です。
例えば、
・帝、雑用せ(サ変未然形) させ給ふ。
という表現の場合、最高敬語と考えると「帝が雑用をなさる」となり、常識的にはありえません。使役の対象を補って、「帝、(召使いに)雑用せさせ給ふ」とし、いくら帝が主語であっても「せ」は使役と考えるのが古文の常識です。実戦レベルではよく問われます。
ちなみに、「帝に対する最高敬語はどうなるんだ?」という疑問もわいてきますが、表現としては、最高敬語とは言えない。ただし、「人を使役する」表現自体がすでに敬意を含んでいる、という言い方はできるかな。
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