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「る」「らる」の意味を訳し分けるコツは、「判断根拠」を明確にすることです。いつも「なんとなく」判断していると、設問になっても「なんとなく」ひっかかる。普段、学校で、塾予備校で古文読解をする、そこが練習の場です。模試を受けて設問になってから「え~と」ではなく、普段の読解の中で、常に判断根拠を明確にして訳していくことが大切です。
だから、「短文」でやってわかったつもりにならないように。「人物関係」「置かれた状況」といった文脈の中で、根拠づけすること。
【助動詞「る」「らる」の意味】
四段・ナ変・ラ変の未然形には「る」が、それ以外の未然形には「らる」が接続します。意味はまったく同じ、接続がちがうだけです。「シナラ・る」と覚えましょう。
ちなみに、「自発」「可能」には命令形がありません。「思わず~しろ!」とか「~できろ!」って表現としてオカシイ、そもそも人に命令はできません。
1.〈受身〉
(動作主)に動作る・らる=(動作主)に動作される
「動作主」とは「動作をする人」。「母ちゃんにしかられる」の場合、「母ちゃん」は「しかる」動作をする人でしょ?
・犬に噛まる。(犬に噛まれる。)
「噛む」動作主は「犬」、マ行四段活用「かむ」未然形「かま」、「シナラの未然形」なので「る」が接続します。
2.〈可能〉
る・らる+打消(ず・じ・まじ・で・等)・反語
=不可能(~できない)(~できようか、いやできない)
・つゆ寝(い)ねられず。(少しも眠ることができない。)
ナ行下二段活用「寝ぬ」未然形「寝な」、「シナラの未然形」以外なので「らる」が接続します。打消しの助動詞「ず」をともなって「可能」なのですが、結果的に「不可能(~できない)」を表現します。「ず」が未然形接続なので、未然形「られ」です。
反語も結果的に「~ない」と、打消しの意味になるので、「ものかは(反語の終助詞)」などをともなったら、可能です。
3.〈自発〉
「自然に発生する」から「自発」です。動作は、おおざっぱに「意志的動作(意図してやる動作)」と「自発的動作(思わずやってしまう動作)」に大別できます。
「書く」「答える」…意志的動作
「あくびする」「笑う」「泣く」…自発的動作
「ハッと気づいたら思わず書いていた!」「よ~し、あくびしてやるぞ!ハァ~」
ってなんかオカシイでしょ?状況にもよるでしょうが、基本的にありえない。「思わずやってしまう動作」=「自発的動作」に接続していたら、「自発」と考える。「泣く」「笑う」などの心情的動作も自発的なのがわかりますか?かわいがっているペットが死んだら、「泣かないぞ!」といったって、あとからあとから涙があふれてきます。
「遅刻する~急がなくちゃ!」で、走る。意志的動作かな。「火事だ~」「わ~!」で、走る。自発的動作かな。「状況にもよる」というのは、そういうことです。
・自発的な動作・心情表現の動作+る・らる
=「自発」…思わず(つい・自然に)~する・~せずにはいられない
・故郷(ふるさと)思ひ出でらる。(なじみの土地のことが自然に思い出される。)
ダ行下二段活用「思ひ出づ」未然形「思ひ出で」、「シナラの未然形」以外なので「らる」が接続します。「思ひ出づ」は心に自然に浮かんでくる自発的な動作です。
4.〈尊敬〉
上記のどれにもあてはまらない=尊敬(~なさる・お~になる)
1~3のどれにも当てはまらない場合は、しょうがないから尊敬と考えましょう。尊敬は、とくに判断根拠のないミソッカスです。
ちなみに、尊敬の補助動詞「給ふ」などに比べると、尊敬「る」「らる」は敬意が低いです。
・かの大納言、いづれの舟にか乗らるべき。
(あの大納言はどの船にお乗りになるつもりだろうか。)
四段動詞「乗る」未然形「乗ら」、「シナラ」の未然形だから「る」が接続しています。「べし」は、ここでは意志、終止形接続だから、終止形「る」で接続。
ひとつひとつ判断してみましょう。
1.「舟に乗られる」って、受身の構文!と考えたあなたはどうかしていますよ。重たくてしょうがないでしょ?
2.打消なし、反語とも考えられない。
3.「乗る」は「意志的動作」でしょ?ハッと気がついたら「思わず」乗っていたって、ありえんでしょう。
4.以上、どれにもあてはまらないから、しょうがなく「尊敬」、やっぱり主語は「大納言」貴いお方。
これが正しい判断です。
反対、主語が「大納言」貴いお方だから「尊敬」、はダメ!貴いお方が主語で「受身」「可能」「自発」だってあり得ます。必ず「1234」とステップを踏んで判断しましょう。
まあ、どちらともいえないな、という場合もよくあります。でも心配いりません。みなさんがわざわざ問われる場合は、上記の判断根拠で判断できるものに限られるでしょう。
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