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古文 文法24 「なむ」の識別(助動詞・終助詞・係助詞)

三大識別「なり」「なむ」「に」、文法の仕上げに入っています。大切なのは、たかが動詞の活用であっても、「こんなの中学校でやったよ…」という文法事項であっても、わからなかったら勇気を持って振り返ること。抜けてるものをそのままにしないこと。そのための識別問題です。それでは第二段、「なむ」の識別に入っていきます。

★★★★★【なむ】の識別】

1.~なむ~連体形。…係助詞「なむ」。
※基本的には文中で用いられ、文末は連体形で結ぶ。ただの強調で、訳す必要はない。

2.未然形+なむ。…あつらえ(他に対する希望)の終助詞「なむ」。
   ・あつらえ(他に対する希望=~してほしい)
※基本的に文末で用いられる。

3.連用形+なむ。…強意の助動詞「ぬ」未然形「な」+推量・意志の助動詞「む」。
   ・強い推量(きっと~だろう)
   ・強い意志(きっと~しよう)
   ・可能推量(~できるだろう)
   ・適当(~するのがよい)
※これも基本的には文末で用いられる表現。

【連用形+なむ】→→→文法8推量の助動詞「む」

4.死なむ・往なむ…ナ変動詞「死ぬ・往ぬ」未然形+推量・意志の助動詞「む」。

〈1.係助詞「なむ」〉

・あはれなりつる心のほどなむ忘れむ世あるまじき。
(思いやり深かったあなたの心づかいを忘れる時はないだろう。)

文中で「なむ」が用いられ、文末が「連体形。」になっている(打消推量の助動詞「まじ」連体形「まじき。」)。基本的に「なむ」が文中で使われていたら係助詞くさいです、が、必ず結びを確認すること。当然、実戦ではバレバレの形では出しません。係助詞「なむ」の結びの省略は、「なむ」の識別問題のお約束のヒッカケ選択肢、みんなひっかかります。

・いと恥づかしうなむ
(とても恥ずかしいことでございます。)

係助詞「なむ」。結び「侍る(丁寧の補助動詞)」等が省略されています。
シク活用形容詞「恥づかし」の本活用連用形「恥づかしく」のウ音便に接続しています。形容詞の本活用連用形に「なむ」が接続していたら、係助詞「なむ」です。補助動詞「あり」「侍り(候ふ)」「おはす(おはします)」が省略されています。

【結びの省略】→→→文法4係り結び

これを上記の3.「連用形+なむ」ととったら大間違いです。3.の「な」は助動詞「ぬ」だから形容詞に接続する場合は補助活用連用形に接続し、
・恥づかしかりなむ
という形になるはずです。形容詞の補助活用がどのような働きをするのかおさえておくのが重要だというのが、ココにいたってわかりますね。

【形容詞の補助活用】→→→文法入門6形容詞

ちなみに、上記2.「未然形+なむ」終助詞も、形容詞には補助活用に接続し、
・恥づかしからなむ
となります。だから、形容詞本活用に接続した場合は、係助詞「なむ」に決まり!なのです。
その他、形容詞に限らず、文脈上分かりきっているものはガンガン省略します。例えば、歌について言っている文脈で「歌をなむ。」とあったら、結びを「詠む(連体形)」と補って、「なむ」は係助詞ということになります。場数を踏むべし、です。

〈2.あつらえの終助詞「なむ」〉

・いつしか梅咲かなむ
(はやく梅が咲いてほしい。)

四段「咲く」未然形に接続し、あつらえの終助詞。副詞「いつしか」は意志や希望の表現と呼応し「はやく~」と訳します。

〈3.助動詞「ぬ」+助動詞「む」〉

・寝ざらむもわろかりなむ
(寝ないでいるのもきっと良くないだろう。)

形容詞「悪(わろ)し」の補助活用連用形「悪かり」に接続し(上記の「恥づかしうなむ」と比べてみよう)、強意の助動詞「ぬ」未然形「な」+「む」。ここでは強い推量「きっと~だろう」の意です。

ちなみに、未然形・連用形が同形の活用語(上一段・下一段・上二段・下二段)に接続した場合、接続を見ても、上記の2か3か識別できません。文脈から判断するしかありません。頭の中に即座に「あつらえ・強い推量・強い意志・可能推量・適当」の五つの選択肢を思い浮かべ、適切な訳を選んでください。以前にあげた例文をもう一度検証してみましょう。

・飛び降るとも降(お)りなむ
(飛び降りても降りることができるだろう。)

「降り」は上二段活用「降る」。未然形も連用形も同じ「降り」です。
未然形なら上記2.「あつらえ終助詞」、連用形なら上記3.「ぬ+む」、接続を見ても判断できません。
文脈は、『徒然草』において、木登り名人が「木から降りて来る時にナメてかかってケガをするものだから注意しろ」といっている文脈です。ナメてかかっているということは、木登りをしている者が不可能さの度合をあまく見ているわけです。だから、3.の可能推量で訳したいのです。木登りをする者自身が思っている内容ですから、「飛び降りてほしい」(他に対する希望)はおかしいのです。

・うつたへに忘れなむとにはあらで、
(全く忘れてしまおうというわけではなくて、)

「忘れ」は下二段活用「忘る」。未然形も連用形も同じ「忘れ」です。
未然形なら上記2.「あつらえの終助詞」、連用形なら上記3.「ぬ+む」、接続を見ても判断できません。
文脈は、『土佐日記』において、筆者、紀貫之の奥さんが、死んだ娘のことを思い出して悲しんでいるシーン。「忘れる」というのは、「うつたへに忘れなむ」と思っている奥さん自身の動作なので、3.の強い意志で訳したいのです。推量・意志の表現「む・べし・じ・まじ」は、その人自身の動作について使われていたなら意志という傾向があるからです。2.「未然形+なむ」=「死んだ娘のことを(他の誰かに)忘れてほしい」と思う母親がはたしているでしょうか?

〈4.ナ変動詞+助動詞「む」〉

願はくは花の下にて春死なむ
(願うことなら桜の下で春に死にたい。)

ナ変動詞「死ぬ」未然形「死な」の活用語尾+意志の助動詞「む」。
「死なむ」「往(去)なむ」の形をとったら誰でもわかりそうなものですが、かな書きで「しなむ」「いなむ」と出されたら、なかなかやっかいですよ。それが実戦です。
サ変動詞「す」の連用形「し」?とか、ヤ行上一段動詞「射る」の未然形・連用形「い」?とか、ワ行上一段「居る・率る」(「行」があやふやな受験生)?とか、選択肢が急に増えてきます。文脈の中で訳していくしかないのです。たかだか「なむ」の識別でも、結局は文脈の読解能力が問われることになります。早稲田、上智などの難関大レベルですか。

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