「枕詞」と「序詞」を混同している受験生が本当に多いです。その混同は機能が似ているところからきています。
【「枕詞」と「序詞」の共通点】
・ある語の「前ふり」となる表現である。
・下に来る語を導く働きをする表現である。
可愛い女の子が赤いリボンをつけている。たとえそのリボンがなくても、その子の可愛らしさは変わらないのだが、リボンをつけることで、可愛さがよりいっそうひきたっている。
その「リボン(飾り)」が文章における「修辞(レトリック)」と言われるものです。なければ困る、というものではないのですが、あればよりいっそう伝えたいことが強調されます。
「枕詞」「序詞」はその「修辞」としてよく用いられるものです。機能が似ているけれども、違う。
「枕詞」と「序詞」の相違点
・枕詞…決まって五音、下に来る語は決まっている。慣用的表現。
・序詞…原則七音以上、下に来る語は決まっていない。非慣用的表現
「枕詞」が、和歌を詠む人たちの間で「約束ごと(コード)」として決まっていたのに対して、「序詞」は約束として決まっているものではなく、歌を詠む人がそれぞれ独自に考え出した「前ふり」表現です。よって、「序詞」を解釈する我々も、「それぞれ」の和歌で、自分で判断しなければなりません。だから、「序詞」は難しい。「演習量」、「場数」が求められます。
【「枕詞」とは?】
〈枕詞〉
…決まって五音、特定の語にかかる。表現は約束ごととして決まっている。
〈代表的枕詞〉
・あしひきの→山
・あづさゆみ→押す・引く・張る・射る
…(弓は押して引いて張って矢を射るもの)
・あまざかる→ひな(田舎の意)
・あらたまの→年・月・春
・あをによし→奈良
・うつせみの→命
・からころも→着る
・くさまくら→旅
・しろたへの→衣(ころも)
・たまきはる→命
・たまほこの→道
・たらちねの→母
・ちはやぶる→神
・ぬばたまの→黒・夜・髪(色の黒いものがくる)
・ひさかたの→空・天(あめ・あま)・光・月
…(空に関する語がくる)
以上、入試に必要最低限なものだけあげたので覚えてしまいましょう。「枕詞」というのは、『万葉集』まで入れると数限りなくあって、きりがない。一つの基準は『百人一首』で用いられているもの、です。
「枕詞」は虫食いの空欄補充問題でよく問われます。
「( )旅にしあれば…」あるいは
「草枕( )にしあれば…」
どちらをきいてもよいでしょう。
ちなみに、和歌の修辞は何も和歌に限ったことではありません。近世江戸期、特にも国学者たちは散文(普通の文章)の中でやたらに和歌の修辞を使っています。和歌の修辞は、実は江戸期の散文を出題する大学で要注意です。過去問演習に入った時に確認してください。
【「序詞」とは?】
「枕詞」とは別ものです。よくひっかかるのは、「このような和歌の修辞を何というか」という問です。解答は「序詞」なのに、受験生は「枕詞」を選んでしまいます。あるいはその反対。枕詞は主なものを覚えてしまえばおしまいですが、序詞は自分で判断しなければならないので面倒です。ここでしっかり定義をおさえましょう。
〈序詞〉
…七音以上で、ある語句を導き出すはたらきをする表現。枕詞が慣用的に特定の語を導き出すのに対し、序詞は非慣用的で自由に用いられる。
1.〈意味の関係から導く「序詞」〉
・瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末にあはむとぞ思ふ
注:「瀬を速み」…名詞「を」形容詞語幹「み」=名詞「~が」形容詞「~ので」。和歌で用いられる原因理由を表す構文。「はや」はク活用形容詞「速し」の語幹。
【~を~み構文】→→→文法26和歌に関する重要表現
口語訳:川の瀬の流れが速いので、岩にせき止め(せく=せき止める)られる滝川の(末には合流する)ように、今は別れても行く末にはあなたと一緒になろうと思います。
解説:「急流が岩にぶつかったら、水の流れは割れる(分かれる)」と、意味上のつながりから「割る」の前フリになっている。
2.〈同音の関係から導く「序詞」〉
・住の江の岸による波よるさへや夢の通ひ路人目よくらむ
口語訳:住の江の岸に寄る波、その「よる」ではないけれど、(昼ばかりか)夜までも夢の中の通い路であなたは人目を避け(よく=よける・避ける)ているのだろうか。
解説:「寄る(ヨル)」「夜(ヨル)」と同じ音のつながりから前フリになっている。
3.〈掛詞を導く「序詞」〉
・立ち別れ因幡の山の峰に生ふるまつとし聞かばいま帰り来む
注:「まつとし」の「し」は強意の副助詞、訳さない。「いなば」=「因幡」「往なば」の掛詞。「まつ」=「松」「待つ」の掛詞。
口語訳:あなたと別れて因幡(いなば)の国に下って行きますが、その因幡の山の峰に生えている松ではないけれど、あなたが私を「待つ」と聞いたらすぐに帰って来ましょう。
解説:「山の峰に生えるのは松」と意味上のつながりから「松」の前フリになっているのだが、それが「待つ」と掛詞になっている。掛詞のもう片方の「松」を導き出す前フリになっている。
以上、三種類の序詞の用法があります。和歌とは何かしら感動を詠むものです。和歌全体で詠まれている感動を考えてみましょう。
1.「今はキミと別れても、いつかキミと一緒になるよ!」
2.「あなたって人は、夜の夢の中でまで人目を避けて私のところに通ってきてくれないのね…」
3.「今は別れても、君が僕を待っていると聞いたら、僕はすっとんで帰ってくるよ!」
といった感情を歌にしたものです。それぞれの歌が「滝川の流れ」「住の江の波」「因幡の山」といった景色の美しさを詠んだものではないのを確認してください。
「叙情歌」であって「叙景歌」ではないということです。それぞれの歌で「景色」は「前フリ」として読まれているのがわかるでしょうか?
このように、和歌全体で詠まれている感動とは直接関係がなく、ある語句の「前フリ」となっていたら序詞と考えます。
「序詞」の判断ポイント
・和歌全体の感動の中心を考える→感動の中心と関係がない、ある語の「前ふり」となっていたら「序詞」と考える。
「序詞の三用法」をここでしっかりおさえてください。これが「序詞」判断の基準となります。
以上、「序詞」は自分で判断しなければいけないので難しい、だから、難関大学はそこをついてきます。
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