「なり」「めり」は推定「~ようだ」でよいのですが、その推定する根拠が違います。特にも推定「なり」は和歌解釈、「なり」の識別、傍線部訳の解答根拠、といろいろ活躍してくれる助動詞です。ココでしっかりおさえましょう。文法全体の大きなヤマ場です
★★★【助動詞「なり」「めり」の意味】
「推量」と「推定」のちがいは、「推量」が根拠も何もなしに使われるのに対し、「推定」は根拠をともなって使われる分、「推量」よりも「定か」だということです。「めり」は視覚を根拠とし、「なり」は聴覚を根拠とします。
〈視覚推定「めり」〉
めり…視覚推定(~ようだ)
対象を目で見て、視覚にもとづいて推定する。
・(光源氏)のぞき給へば、(尼君が)すだれ少しあげて、(仏に)花奉るめり。
(光源氏がのぞきなさると、すだれを少し上げて、仏に花を差し上げるようだ。)
四段動詞「奉る」終止形に接続しています。光源氏が「垣間見(かいまみ)」のぞき見しているシーンです。視覚による推定だとよくわかりますね。
ちなみに、「めり」には婉曲(~ようだ)がありますが、気にする必要はありません。視覚による根拠をともなわない、断定を避けて遠まわしに表現しているだけです。いずれ、「めり」は「~ようだ」と訳せばOKです。
〈聴覚推定「なり」〉
なり…聴覚推定(~ようだ)・伝聞(~ということだ・そうだ)
対象を目で見ていない。音や声で聞き、聴覚にもとづいて推定する。
耳から入ってくる情報がうわさであったなら伝聞。
音・声の文脈 … 推定
うわさの文脈 … 伝聞
・秋の野に人まつ虫の声すなり
(秋の野で人を待つという松虫の声がするようだ)
サ変動詞「す」終止形に接続しているので伝聞・推定の助動詞「なり」、文脈に「声」とあるから推定です。ちなみに「まつ」は「待つ/松」の掛詞
・また聞けば侍従の大納言の御むすめなくなり給ひぬなり。
(聞くところによると、侍従の大納言の娘がおなくなりになったということだ。)
完了「ぬ」終止形に接続しているので伝聞・推定の助動詞「なり」、文脈に「また聞けば」とうわさを表す表現があるので伝聞とわかる。
以上、推定「なり」「めり」はどちらも「~ようだ」と訳すものの(伝聞はおいといて)、推定する根拠が決定的にちがいます。そのちがいをここでしっかりおさえましょう。
また、「なり」については、のちのち「なり」の識別という最重要事項が待っていますから、伝聞・推定ともにその根拠づけをしっかりできるようにしておきましょう。文法23「なりの識別」でやります。
★★★★★【ラ変型活用語・連体形+推定の助動詞「なり」「めり」
→撥音便の無表記】
推定の助動詞「なり」「めり」は終止形接続ですが、終止形接続の助動詞は全てラ変型活用語には連体形に接続します。ラ変型活用語連体形が推定「なり」「めり」に接続すると撥(はつ)音便(「ン=撥音」に音が変わる)をおこして無表記の形になる場合があります。
ちなみに、「撥」は訓読みすると「撥(は)ねる」、ピョンとはねる音なので「ン」を撥音といいます。
ラ変型活用語・連体形
「~る」+「なり」「めり」
↓
撥音便「~んなり」「~んめり」
↓
無表記
※(読むときには「ン」を補う)
ラ変動詞は四語ですが、ラ変型活用語は無数にある。よって、推定「なり」「めり」にともなう無表記パターンも無数にあります。だから、ラ変型活用語に何があるか、おさえてしまえばおしまいです。一連の説明が「わからない」という受験生は、用言の活用、助動詞の接続があやふやだからです。もう一度「入門編」からやりましょう。
それでは、ラ変型活用語の全パターンを見ていきます。
〈推定「なり」「めり」にともなう撥音便の無表記 全パターン〉
ラ変動詞「あり」連体形「ある」
…「あんめり」「あんなり」→「あなり」「あめり」
形容詞補助活用連体形「~かる」
…「~かんめり」「~かんなり」→「~かめり」「~かなり」
例「良かめり」「うつくしかなり」
形容動詞連体形「~なる」
…「~なんめり」「~なんなり」→「~ななり」「~なめり」
例「あはれななり」「うつくしげなめり」
ラ変型活用の助動詞完了「たり」連体形「たる」
…「たんめり」「たんなり」→「ためり」「たなり」
形容詞型活用の助動詞「べし」「まじ」連体形「べかる」「まじかる」
…「べかんめり」「まじかんめり」→「べかめり」「まじかめり」
「べかんなり」「まじかんなり」→「べかなり」「まじかなり」
形容動詞型活用の助動詞断定「なり」連体形「なる」
…「なんめり」「なんなり」→「なめり」「ななり」
特殊型活用の助動詞打消「ず」連体形「ざる」
…「ざんめり」「ざんなり」→「ざめり」「ざなり」
【ワンポイント アドバイス】
断定の助動詞「なり」の上で撥音便は決して起こさないので、「撥音便+なり」の「なり」は伝聞・推定の助動詞と決まる。
・この世に生まれては願はしかるべきことこそ多かめれ。
(この世に生まれると、こうありたいと願うはずのことが多いようだ。)
形容詞「多し」補助活用連体形「多かる」撥音便の無表記。形容詞、下に助動詞がくるときは補助活用、補助活用はラ変型活用語でしたね。
・すずろなる死にをすべかめるかな。
(思いがけない死に方をしなければならないようだなあ。)
形容詞型活用助動詞「べし」補助活用連体形「べかる」撥音便の無表記。形容詞型活用の助動詞は、形容詞と同じあつかいでしたね。
・「上こそ。この寺にありし源氏の君こそおはしたなれ」
(おばあさま。この寺にいた源氏の君がいらっしゃったそうだ。)
完了の助動詞「たり」連体形「たる」撥音便の無表記。撥音便のあとの「なり」は伝聞・推定に決まる。(ゼッタイ断定ではない)ここでは伝聞。
・大納言拍子取って、「信濃にあなる木曾路川」
(大納言は拍子をとって、「信濃にあるという木曽路川」
ラ変動詞「あり」連体形「ある」撥音便の無表記。撥音便のあとの「なり」は伝聞・推定に決まる。(死んでも断定ではない)ここでは伝聞。
以上、これまでの文法事項の総復習でしょ?だから、ヤマ場なのです。
緊急避難的には、
「あ・か・ざ・た・な」+「なり」「めり」=撥音便の無表記
でもいいのですが、それは応用がきかない。安易なとらえ方は分かりやすいけれど、大ケガのもと、誤読につながります。
・使者の馬どもなめり。
(使者の馬が連なっている。)
※「なめ」=四段「並む(…並ぶ)」已然形
・「り」存続の助動詞終止形
「撥音便+なり=伝聞・推定」は選択肢を消去するネタとして使えます。
で、ひっかけられます。学校の定期考査でやっていると思いますが。
『枕草子』
・中納言があまりに扇の骨を自慢し、誰も見たことのない骨だといったのに清少納言がツッコミを入れます。
「くらげの(骨)ななり。」
下線部の説明が求められ「撥音便は伝聞推定に決まり!」で「な=伝聞推定!」と、あっさりひっかかります。
傍線部「な」の文法的説明=断定の助動詞「なり」連体形「なる」の撥音便無表記
です。「撥音便+なり」の「なり」が伝聞推定です。撥音便の下の「なり」が伝聞推定に確定、です。
推定「なり」「めり」そのものは撥音便を決しておこさないので、ご注意ください。
〈推定の助動詞「らし」〉
助動詞「らし」は、和歌の中で使われ、活用無し(覚える必要がない)、で、意味は「らし」=「らしい」でいい。問われる助動詞ではないので、スルーします。
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